ますかれーど
--玄side--
漆黒の仮面。
闇へと身を委ねた蒼い空は、どんな色をも受け入れる事を拒絶した。
1度囚われてしまったその仮面は、月が上弦を迎えても尚、消えはしない。
時間だけが過ぎてゆく。
通り過ぎる時は無情で残酷で‥もちろん、誰にも止めることなんて出来ない。
今日は、上弦の七分月。
もう少しでまた‥
オレの嫌いな下弦の月が、顔を出す。
ココロのない人形。
そうだな‥その表現が1番合ってる。
バイクが病院に着いたと同時にヘルメットを投げ捨てて、走っていったあいつ。
俺は所定の位置にバイクを置いて追いかけたけど……遅かった。
また、繰り返すんだ?
魅さんを責めてる訳じゃない。むしろ、1番辛いのは魅さんだろ?
あの時、ココロを砕いて散らして封印していたあいつを、呼び起こしたのは魅さんだ。
魅さんが居れば、あいつはまた、元に戻る。
でも、でもーー‥っ
今度は、その魅さんも目を覚まさない。
またあいつは自分を責めるだろう。
俺はまた‥見てることしかできないのか?
俺もまた、繰り返すのか?
ーーなぁっ!!
誰か‥教えてくれーーっ
俺は、どうすれば良い?
俺は、あいつの為に何をしてあげられる?
愛しいと想うココロは、抑えつけられて胸の底に焦げ付き、痕を残す。
あいつの為に何かしてやりたい。そう思うのは、俺の傲りか?
ーーーーーー‥
あいつのココロが壊れてから、15日が経っていた。
今日は9月の最終日。
あいつは今日も、学校には行かなかったらしい。
部屋にこもったまま、ただずっと、あいつがあいつの誕生日に着ていた白いドレスを、眺めてんだって。
陽が落ちるのが早くなって、月が顔を出すのも必然的に早くなる。
上弦の七分月。
もうすぐ、満月だ。
「兄貴っ!!」
息を切らしながら俺の部屋のドアを乱暴に開けたレイ。こんなに慌てるなんて、珍しいことだ。
「どうしたんだよ」
「心が‥心が、居なくなったのっ!!」
今にも泣きそうで、混乱し始めているレイ。
「まさか、まさか‥」
まさかーー‥
その言葉の続きなんて、口に出すんじゃねぇ。
身体の隅々まで聞こえる鼓動。
それは、
不安と、焦りの色。