ますかれーど
肌を撫でる秋の風は、雲の頬をも撫でてゆく。

キラキラした月にかかった、ふわふわしてる白い雲。

銀色の光に照らされて、虹色のおめかしをしていたんだ。





ーーーーーー‥




「心‥」



いつの間にか私の顔は、お父さんの胸にあった。

こんなに泣いたのは、お母さんとお話したあの時以来で。



泣いて、泣いて、泣いて、泣いて。



大量の涙と鼻水は、しがみついていたお父さんの服についた。



「汚ねっ」



そう言って笑うお父さんの目の回りは、真っ赤。

やっぱり、泣いてたんだ。



「ごべむな゛さい」



鼻が詰まってうまく話せない。

すると、急にクツクツと喉を揺らして笑い始めたお父さん。



「な゛に゛?」

「そういうとこ、お母さんにそっくりな」

「え?」

「泣くのを我慢するとことか、泣いたら泣いたで大声だして号泣するとことか」



頭に乗せられた大きな手は、とても温かい。



「お母さんが、泣き虫?」

「ああ」



切れ長の蒼い瞳は、優しく弧を描く。



「お父さんじゃなくて?」

「あ?」

「お父さんは泣き虫だって聞いたことある」

「っ‥誰にだよ」



もしかして、ちょっと焦ってる?

なんだか、その変化が楽しくて。嬉しくて。



「内緒っ」



そう言ったら、頭に乗せられていた手に力が入った。



「いたたたっ痛いっ」

「言え」

「みー姉とっ、」

「と?」



その瞬間ふっと頭の中に見えた、怒っているような紅茶色の強い眼差し。



「クロか」

「え?」

「分かり易いとこも、お母さんそっくりだな」



大きな手は、私のくるくるし始めてる髪の毛を梳くように撫でていた。



「お前は、お前のココロのままに進め」



お父さん?



「お父さんもお母さんも、いつでもお前の味方だ」



月の光に照らされて



「愛してるよ、心」



キラキラしてる銀色の髪がとても綺麗で



「お母さんは大丈夫だ」


同じ蒼に安心した。



涙は止まることを知らなくて。


私はずっと、お父さんの腕の中で泣きじゃくってたんだ。





ーーーーー‥





今、悩んでいることも

苦しんでいることも

きっと、

未来へと繋がっているから。




ーー‥心?



笑ってーー‥




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