ますかれーど
月の光の下で踊ろう。
黒い猫が、楽しそうだなって目覚めるくらいに。
楽しく陽気に元気よく。
テンポは‥そう、ギャロップが良い。
早く、速く、ハヤク‥
ーーー踊ろう。
ーーーーーーーー‥
「心?」
「ん?」
「何?その箱」
キレイな包装紙に包まれた、手と同じくらいの大きさの箱。
「わかんない。気づいたら持ってたの」
「ふーん。開ける?」
「いや、今はいいや。早くお母さんのとこに行こう」
何よりもまず先に、お母さんの側に行きたかったんだ。
「そ?じゃあ‥」
麗花は、後ろでやっと立ち上がったその人へと視線を向けた。
「兄貴の鞄に入れときなよ。なくしたくないでしょ?」
「なんで俺のなんだよ」
「だって、鞄持ってんの、兄貴だけじゃん」
その言葉にぐるりと見回すと、3人とも手ぶら。
「はぁーー‥」
その人は、派手に大きくため息をつくと、髪の毛をガシガシとぐちゃぐちゃにした。そして‥
「ほらっ」
って言いながら、長い指の手を差し出した。
「ありがと‥」
「あぁ」
私の手のサイズのその箱。渡した指の長い手には、小さく小さく見えた。
「行こっ」
「うんっ」
私と麗花の距離は変わらない。
昔からずっと一緒に居たから。
変わったのはーー‥
「おぃお前ら、タクの車で行くぞ」
「お父さんって、運転できるんだ‥」
「まぁな」
私とお父さんの、近くなった距離と‥
「蒼さん、俺が出しますよ」
「いや、いい。今日はなんかそんな気分だ」
私と瞳を合わせてくれないこの人との、遠くなった距離。
天秤にかければ同じ重さなんだけどーー‥
寂しいと、そう思うのは何でだろう?
関係ないと、突っぱねたのは私自身なのに。
元に戻るなんてことは、もう‥できない。
できないんだ。
ーーーーーー‥
ギャロップのテンポで踊ろう。
今宵は明るい七分月。
長月の、最終日。
……何か、大事なことを忘れてるような気がした。
そんな、紺色の夜だった。
黒い猫が、楽しそうだなって目覚めるくらいに。
楽しく陽気に元気よく。
テンポは‥そう、ギャロップが良い。
早く、速く、ハヤク‥
ーーー踊ろう。
ーーーーーーーー‥
「心?」
「ん?」
「何?その箱」
キレイな包装紙に包まれた、手と同じくらいの大きさの箱。
「わかんない。気づいたら持ってたの」
「ふーん。開ける?」
「いや、今はいいや。早くお母さんのとこに行こう」
何よりもまず先に、お母さんの側に行きたかったんだ。
「そ?じゃあ‥」
麗花は、後ろでやっと立ち上がったその人へと視線を向けた。
「兄貴の鞄に入れときなよ。なくしたくないでしょ?」
「なんで俺のなんだよ」
「だって、鞄持ってんの、兄貴だけじゃん」
その言葉にぐるりと見回すと、3人とも手ぶら。
「はぁーー‥」
その人は、派手に大きくため息をつくと、髪の毛をガシガシとぐちゃぐちゃにした。そして‥
「ほらっ」
って言いながら、長い指の手を差し出した。
「ありがと‥」
「あぁ」
私の手のサイズのその箱。渡した指の長い手には、小さく小さく見えた。
「行こっ」
「うんっ」
私と麗花の距離は変わらない。
昔からずっと一緒に居たから。
変わったのはーー‥
「おぃお前ら、タクの車で行くぞ」
「お父さんって、運転できるんだ‥」
「まぁな」
私とお父さんの、近くなった距離と‥
「蒼さん、俺が出しますよ」
「いや、いい。今日はなんかそんな気分だ」
私と瞳を合わせてくれないこの人との、遠くなった距離。
天秤にかければ同じ重さなんだけどーー‥
寂しいと、そう思うのは何でだろう?
関係ないと、突っぱねたのは私自身なのに。
元に戻るなんてことは、もう‥できない。
できないんだ。
ーーーーーー‥
ギャロップのテンポで踊ろう。
今宵は明るい七分月。
長月の、最終日。
……何か、大事なことを忘れてるような気がした。
そんな、紺色の夜だった。