ますかれーど
「ここ‥どこ?」



おぇって車に酔ったから少し寝てたんだ。

しばらくして目的地に着いたみたいで、麗花にデコピンで起こされて、よろよろと車を降りた。

すると目の前にはーー‥



「雲までありそう‥」



超高層ビルがそびえ立っていた。

真四角じゃない、なんか不思議な曲線を描くこのビルの外観は、アシンメトリーですごくデザイン的。



「行くぞ」



車をどこかに置いてきたらしいその人のかけ声で、私たちはそのビルに入っていく。

こ‥このビルに入るのか。場違いじゃないかな?

何食わぬ顔で歩を進めるこの2人を、すごいと思った。



「ねぇ麗花」

「ん?」

「ここで何すんの?」



こっそりと聞いてみた。今日のお出かけの目的を聞いてなかったんだな、私。

こんなすごいビルなんかに何の用なんだろ。



「あれ?言ってなかったっけ」



その綺麗な顔でしれっと笑う麗花は、色んな意味でステキだと思った。



「ただいま社長方が参りますので、少々お待ちくださいませ」



受付に座っていた可愛らしい声のお姉さんが、ニッコリと私たちに微笑みかける。

……って!!



「社長っ!?」

「ばかっ!静かにしろよ!!」

「あはは♪恥ずかしいなぁ、心は」



私のデカい声が響きわたり、このオフィスビルに行き交う人々の視線を集めた。

だって、だって、社長だよっ!?このすっごいお洒落ビルの持ち主ってことだよね?

そんな人に会ってどうすんだろ。



「くすくすくす」

「お待たせ」



そう言って笑いながら私たちに近づいてきた2人。

美形の同じ顔に、オレンジっぽい髪をお洒落にまとめてる。

ノーネクタイで細身のスーツ姿が、見惚れる程にカッコ良い‥。



「久しぶりだね、心ちゃん」

「あれからもう1週間か‥」



あ‥この人たち、お母さんの病室に来てくれた双子のおじさんだ。


2人は私の頭に手を置いて、その美形をやんわりと緩めた。

言葉にしなくても解る。その優しさに、涙が出そうになる。



「今日はよろしくね」

「俺らが頑張って可愛いの作るからさ」



‥作る?



「じゃ、心ちゃんとレイちゃんは僕らと24階へ」

「クロはどうする?」

「どう‥すっかな」

「悩んでる位なら来いっ」



私たちは、オフィス中の視線を集めていた。
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