ますかれーど
外が見えるエレベーターに乗り込む。恐いよ。いや、別に高所恐怖症なわけではないんだけど。

驚くほどに静かに上がっていくこの透明な箱。
耳が痛くなる‥。



「心?大丈夫?」

「う゛ー‥耳が痛い」



チンって鳴って扉から出た。でも、まだ治らない。



「あーあーあー」



耳をポンポンと叩いてみてもダメ。



「心ちゃん、耳抜きしな?」

「耳抜き‥ですか?」



鼻をつまんで思いっきり息を抜く。



「ふぁっ!出来た!」

「はは。もしかして心ちゃん、泳げなかったりする?」

「あー‥はい」

「「魅と同じだね」」



同じ顔で笑う2人。声がハモる事に、凄いと感動した。

広い広いこのフロア。

案内された部屋も、やっぱり広い。紅澤家のリビング以上にだだっ広い。
少し光沢のある、上品な灰色の絨毯が敷き詰められたこの部屋をよく見回すとーー‥



「ドレスがいっぱい‥」

「キレイだよねー♪心は、どんなのにする?」

「え?」

「道化?女王様?あ、メイドってのもアリだよねぇ♪」



恐ろしくテンションの高い麗花。何を言ってるのか全くわかんなくて、話についていけなくて。



「レイ、こいつにちゃんと説明してあんのか?」



私の右横に並んだ大きな人は、私がわけわかんなくなってることを察してくれたみたい。



「あ‥言ってなかったっけ?」



麗花って、たまにこういうとこあるよね。まぁそれが、完璧すぎる麗花の可愛いとこなんだけど。



「そういえば、俺らの自己紹介もまだだった気がするな?」

「だね」



側でくすくすと笑っていた美形おじさんたちが、振り返って私の前に並ぶ。そして、



「俺は海斗」

「僕は颯斗」

「「よろしくね、心ちゃん」」



って、教えてくれた。
くれたけどーー‥

わっかんないや。

だって、おんなじ顔すぎる!!



「その内わかるようになるよ」



そう、横の人は言ってくれたけど‥この人は見分けられるのかな?



「ほぅ。言うようになったじゃねーかクロ」

「クロのくせに生意気だっ」



3人が格闘しながらじゃれあってる。

なんか、この人のこういう姿って見たことなかったかも。意外と弄られキャラなんだ。



「今日はね、衣装を作ってもらいに来たんだよ」

「衣装?」

「そ♪マスカレードのね」
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