ますかれーど
あぁ‥、なんやかんやで忘れてたけど。

あと1週間とちょっとでハロウィンだ。



「今年は出るんでしょ?マスカレード」



マスカ‥レード。



『今年は参加する?』
『楽しみだねっ♪』



脳裏をよぎったのは、楽しそうに可愛く笑う、紺色の彼の顔。


忘れてたワケじゃない。色んなことがありすぎて、考える余裕がなかった。ーーなんて。言い訳にしか聞こえないよね。


ギュッと心臓が締め付けられて、苦しくなる。



「心‥」



そっと私の頭を撫でる麗花。きっと、麗花は全てを解ってる。解ってるからこそ、楽しく元気に私をココへと連れて来たんだ。


そんな心配そうに揺れる紅茶色をまっすぐに見ながら、



「麗花は、何にするの?」



私は元気に聞いてみる。

すると麗花は、ふふふと笑った。



「何が似合うと思う?」

「んー。麗花だから、女王様かな?」

「なんだそのイメージは」



楽しもう。せっかくのお祭りだから。

マスカレードには、きっと彼も参加する。

たぶん、その時にお話‥できるよ、ね?



「じゃぁ、レイちゃんは俺が担当ね。よろしくっ」

「よろしくお願いしますっ」



“俺”って言ったから、麗花を連れて行ったのは海斗さん‥かな?



「心ちゃんの担当は僕だよ。よろしくね?」

「あ、はい。よろしくお願いします」



颯斗さんの方が、若干‥物腰が柔らかい‥かな?

すぐ横の丸いソファに座ると、颯斗さんは書類みたいのとペンを取り出した。そしてーー‥



「瞳の色みせて」



くいっと顎を引かれて覗き込まれた私の蒼い瞳。
じーっと見られるのは、なんだか緊張するわけであります。



「は、颯斗さ‥」
「颯斗さんっ」



私の声に被って聞こえたのは、低い声。



「なんだクロ、居たのか」

「居たのかじゃないっすよ」

「何イライラしてんの?」



くすくすと肩を揺らしながら楽しそうな颯斗さん。



「時間かかるから、喫煙室でも行って来たら?」
「イイっす。ここに居ます」

「そ?なら良いけど」



不機嫌オーラが恐ろしく漏れているその人は、私の真後ろに座った。

ちょうど、背もたれを共有するカタチ。


煙草の匂いがする。


私は、ポッケをきゅっと握りしめた。


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