ますかれーど
顎から手を離した颯斗さんは、優しく微笑んだ。そのカッコ良さに、ほぅ‥っと目眩を覚える。



「蒼と同じ色だね」



なんだか嬉しそうな颯斗さん。



「でも、瞳の大きさや目の形は魅そっくりだ」

「似て‥ますか?」

「ん。同じだよ。蒼に似なくて良かったね?あいつ目つき悪いからさ」



その言葉に、お父さんを思い浮かべてみる。

‥目つきが悪いって言うか、目力が強いって言うかーー‥



「で、心ちゃんは何に変装するの?」

「んー‥全く決めてないんです」

「僕個人としては、やっぱりお姫様が似合うと思うんだよなぁ‥。な、クロ?」



ニヤリと笑いながら私の後ろの人に話を振る颯斗さん。この人‥掴めない人だ。



「なんで俺に聞くんっすか?」

「いや?なんとなく」



2人の間だけにしか成立していない会話。ーーなんか、ちょっとだけ疎外感。



「クロもお姫様が良いってさ。決定で良い?」

「なっ!誰がそんなこと言ったんすか!」



全っ然ハナシが先に進まないっす‥。



「んで、色なんだけど‥」



颯斗さんってマイペースだなぁ。いきなり話を戻せるとこがスゴイと思う。

やっぱり、これだけの大きな会社の社長さんだと、ある程度は去なせる技を持ってないと成り立たないのかな?



「‥って、聞いてる?心ちゃん」

「え!?あ、聞いてませんでした‥スミマセン」

「くすくすくす。そういう所は蒼と似てるよ」



お父さんとお母さんと似てる。そう言ってくれる人があまりいなかった所為か、すごく新鮮な言葉に感じる。

すごく嬉しいっ♪



「しーんー!見て見てーっ」



パタパタと走って来たその人に視線向けた途端、目を奪われた。そこには、ドレスアップしたキレイな女の人。


淡い光沢のある藤色の、腰からぶわっと広がるドレス。飾りが一切ないシンプルなドレスだけど、それがまた大人っぽい。


「似合う?」



くるりと一周してみせた麗花。



「うん‥うんっ!すっごい綺麗だよ!!」

「へへ。ありがとっ♪心は決まった?」

「う?」

「心ちゃんは、あと色だけなんだ」



颯斗さんが説明してくれたその言葉に、麗花はキョトンとした顔を見せた。



「なんで?心はピンクでしょ?ね、兄貴?」

「だから何で俺に聞くんだよっ」



ピンク?‥桃色!?
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