ますかれーど
女の子なら、誰でも1度は憧れを抱く“お姫様”

その肩書きは、“王子様”あってこそだと思うんだけど‥。


じゃあ、私の王子様は誰?


ぐるぐると惑わすメリーゴーランドに揺られて

お姫様は、どこを見ているの?


そして、どんな曲で、どんなダンスを踊るの?



それは、お姫様の伸ばした手が、どの手に触れるのかによって変わる。



光を乱反射して増幅させる、紅か。

光を飲み込んで内へと溜める、紺か。



それは、お姫様の伸ばした手が、どの手を掴むのかによって‥変わるんだ。




ーーーーーー‥




デザイン画を描いてもらって、採寸して、あとは出来上がるのを待つだけ。

大きな窓から空を見れば、秋の柔らかい太陽は、真南をすでに通り越していた。

下を見れば‥あいや、見なかったことにしよう。



「心ちゃん、落としたよ」

「あ、ありがとうございます」



颯斗さんが拾ってくれたのは、紅の香水瓶。
いつの間にポッケから落ちたんだろ?



「それ、クロと同じやつだね」

「みたい‥ですね」



手のひらに乗せられた紅の瓶が、光をキラキラと反射させて私を照らす。

綺麗‥。



「心ちゃん?」

「えっ?あ、なんですか?」

「ココロ此処に在らずって感じだね」

「そんなこと‥ないですよ」



私は、はははと笑ってみせたけど、颯斗さんはやっぱり大人だ。

フッと笑みの種類を変えて、私の蒼を捕らえる。それは、全てを見透かされているみたいだった。



「嘘がヘタなとこも同じ‥か」

「え?」



声色に悲しみが混ざっているように感じるのは何故‥?


真南を過ぎた太陽が橙色を帯びて、それが颯斗さんを射す。

窓の外を見る颯斗さんを、なんとなく‥なんとなくなんだけど、寂しげな兎みたいだなと思ったんだ。



「颯斗‥さん?」

「ん?」



振り向いた颯斗さんは、さっきまでの大人の雰囲気に戻っていた。



「んー‥なんでもないです」

「あはは。さ、レイちゃんの方も終わったかな?」



前を歩く颯斗さん。

海斗さんと颯斗さんも、お母さんやお父さんと、3年以上も一緒に暮らしてたって言ってた。


きっと、きっとね?


私にとってお母さんがとても大切な存在だったように、

颯斗さんたちにとっても、お母さんは大切な存在‥だったんじゃないかなぁ?
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