ますかれーど
「颯斗さんっ」

「ん?」

「ありがとう、ございます」



お母さんを大切に思っていてくれて、ありがとうございます。

お父さんの友達でいてくれて、ありがとうございます。


なんとなく、たくさんの感謝を伝えたかったの。



「心ちゃん‥」



私も、こんな風に、誰かのココロに残ることのできるような存在になりたいな。



「綺麗に育ったね」

「え?」

「外見もだけど、ココロもさ」



うっとりとするくらいの微笑みを見せて、私をやんわりポンポンと抱きしめる颯斗さん。



「蒼のこと、よろしくね。あいつを制御できるの、心ちゃんだけだからさ」



外は風が強いみたいで、カラカラカラと木の葉が宙を舞っていた。

ひらひらヒラヒラ地に落ちることもなく、高く、高く、自由に空を飛ぶ葉っぱたち。



それはまるで、誰かが手を鳴らしているように聞こえる。



「颯斗さんっ!何してんっすか!!」



お怒り気味の声がフロアに響き、私たちはそちらを向く。



「未成年に‥とか犯罪っすよ!?」



虫の居所が悪そうなその人。煙草が吸えないから、イライラしてるのかな?



「クロ、何騒いで‥って!!颯斗っお前!」



びっくりしたような顔を見せた、颯斗さんと同じ顔のその人。

海斗さんだ。


海斗さんは、びっくり顔を崩すことなくこちらへと近づいてくる。



「颯斗、お前……」



そう言って私たちの前に立った海斗さんは、離してくれない颯斗さんの腕の中にいる私を、ジッ‥っと見ていた。


なん‥だろ?

無駄に、緊張する。




ーーーーー‥




「俺も混ぜろー♪」

「ぎゃーーっ!!」



反対側からも抱きつかれて、私はサンドイッチの具みたいになった。



「心ちゃん、ほんっと可愛くなったよ。蒼に似なくて良かったな!」



なんか、颯斗さんもそんなこと言ってたような‥。



「何?何の騒ぎ?」



元の服に戻っていた麗花が、隙間からチラリと見える。

その隙間はーー‥



「きゃー楽しそうーっ♪」



って走ってきた麗花によって埋まった。



楽しい。

楽しいよっ♪



こんなに、顔の筋肉が痛くなるくらいまで笑ったのなんて、いつ以来?

もしかしたら、初めてかもしれないね。



空には、ぷかぷかと、白い雲が浮いている。

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