ますかれーど
収穫祭。

みんなはお化けや怪物、魔女や死に神に変装し、かぼちゃのランタンを持ちながら、流れるポルカに合わせて陽気に元気よく踊る。


小さくて可愛らしいお化け達は、大きな声で

『Trick or Treat!』

って脅しながら、お菓子をもらって歩いてく。


そんな光景を、まんまる満月が、色を赤く変えて見つめてる。


そんな、不思議な眠らない夜が、また来るんだ。



ーーーーーーー‥




肌をすり抜ける秋の風は冷たくなり、体温をいとも容易く奪うようになった。


パラパラパラと資料がめくれてしまう。

それに重石になるものを乗せて押さえる。



「ふぅ。また最初からとか嫌だしね」



この1週間、みんなで頑張って進めてきたハロウィンパーティーの準備。

あっちもこっちも先生までも、浮かれ飛んでは、オレンジや黒を身に纏う。‥早いって。

中等部以上は露天も出せるし、それ以下は仮装の準備。

そして、高等部になれば、深夜のマスカレードもある。


祭りに向けて何かを創作したり、レシピを試してみたり。陣地配分や校内の治安維持まで。

そういうのって、ぜんっぶ高等部の本部に書類が回ってくるんだよね。


そして、そんな雑務は私の仕事。


これでも一応、副会長だったりするので。



「先輩、これどうなってます?」

「それはこれ」

「ありがとうございますっ!失礼しますっ」


「銀崎副会長。これ、至急お返事が欲しいそうです」

「わかった。あと2時間頂戴って伝えてもらえますか?」

「はい!」



テキパキと動くみんな。

幾分、いつもよりも礼儀正しい気さえする。

それは、幼等部から高等部までの人間が集まっているから‥なのかな?



「お疲れ様、銀崎さん」



間髪入れずにガラっと此処のドアを開けたのは、生徒会長だった。



「会長も、お疲れ様です」



私は此処にしか居ないけど、会長は色んな所を回って現場の指揮をとっている。



「外はどうですか?」

「ん。楽しそうだよ♪今のところ揉め事もなく‥ね」



ニッコリと笑った生徒会長のその言葉に、あぁ‥揉め事、あったんだなって察した。



「こっちはどう?」

「今のところ順調ですよ。争いもなく‥ですね」

「「‥ぷっあはははーー‥」」



はいって渡されたココアの缶が、暖かい。
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