ますかれーど
日本語のさ、理解力‥っていうのかな?
それが低下してる。

だって、会長はナニを言ってるの?



「できない?」



細める紺は怪しさを帯びて、蒼を支配しようとする。



「わ‥すれる?」



あの人を忘れる……?



「出来ない?」



出来るワケがない。だって、生まれた時から側にいる人なんだよ?



「何で出来ないのかな?銀崎さんは、“千秋の”彼女なんだよね?」

「ーーっ」



久しぶりに聞く“その”名前に、お腹の真ん中がきゅっと鳴く。

そこに暖かい缶を当ててぎゅーっと抑えつける。



「ねぇ、銀崎さん」



血の巡りが恐ろしく良い。ドクンドクンドクンとうるさくなる。



「僕はもう、あの子の悲しむ顔を見たくないんだ」



ドクンドクンドクン‥



『距離を置こうか』



震える声
震える拳

小さく見えた‥背中



『好きだって言ってよ。今、すぐ!!』


焦ったような言葉。



『いつもクロトって言うんだ』


悲しそうに弱々しく鼓膜を震わせた音。

闇に魅せられた、深い、深い、紺色の瞳。



でも、でも、でも‥っ






「玄さんのコトが好き?」

「えっ」



両肘を机に置いて組んだ手に、顎を乗せて蒼を刺す切れ長の紺。



「そう見えるよ」

「ーーっそんなこと!」



そんなこと……



「そんなことない。そう、言い切れる?」



私が、あの人をーー‥?



「でも、君はあの子と付き合っている。だよね?」



距離を置こうと言われた瞬間に気がついた。

遅すぎる自覚に後悔した。


だんだんと惹かれ始めて、好きになっていた。



「銀崎さんは、あの子のコトが嫌い?」



嫌い?
嫌いなんかじゃーー‥



「本当に好きなのは、どっちなのかな?」



メリーゴーランドが



「千秋?」



ぐるぐるとゆらゆらと



「それとも‥」



回り始めて



「玄さんなの?」



光に触れる白馬は紅く

闇に魅入る黒馬は紺に


それぞれがそれぞれに着飾ろうと準備をし始める。





優柔不断で、自分のココロすら解らない私が‥


ーー‥キライ。





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