ますかれーど
誰もいない生徒会室。
みんな仕事や祭りに出向いていた。
麗花も、午後からは部活の出し物に参加するからもう居ない。
黄色かった太陽の光が真南を越え、だんだんと橙を帯びてゆく。
外はとても賑やかなのに、ここだけは切り取られた異空間みたいに静かだ。
同じく私のココロもとても静かで穏やかで、激情や哀のココロなど異空間に置いてきたみたいだった。
そんな事を考えながら、灰色のキーキー鳴る椅子に座り、ワタシごとぐるぐる回ってみる。
滑稽な独りメリーゴーランドに、思わずふっと笑ってしまった。
その時、
「おーい銀崎」
私を呼ぶ恐ろしく低い声と、キャーキャー叫ぶ甲高い叫び声が、静かだった廊下に響く。
「おやじか‥」
今はすごくすごく会いたくない人物だ。
「だーれがおやじだっ!お兄さまと呼べっ」
勢いよくガラッとドアを開けたのは、やっぱり紫藤先生だった。
聞こえてたのか、今の。
「何ですか?ってか何なんですか?その格好」
紫がかった黒い髪の毛をオールバックで固め、襟を立てた白いワイシャツに黒い長いマント。
「あ?見りゃ分かるだろ?吸血鬼だ吸血鬼」
「はぁ。先生、仕事はどうしたんですか?」
「仕事なんか知らんっ!今日は祭りだぞっ」
えっへんと威張ったように腰に手を当てた先生は、甲高い叫び声を追い払い、ピシャリとドアを閉めた。
この生徒会室に、また静寂が戻ってくる。
「……」
何故そこで黙るかな。
おやじはじーっと私を見ていた。
「何か用ですか?」
そう聞くと、おやじはバサッとマントを翻し、対面の椅子にどっかりと座る。
「お前よぉ‥」
この人‥苦手。だって、全部わかってるような瞳するんだもん。
「何で敬語?」
「先生と生徒だからです」
「ふーん」
大して興味がないかのような返事。
「銀崎が喜んでたぞ?お前が敬語を使わなくなったってよ」
「お父さん?」
「あぁ」
ワタシ、お父さんに敬語なんか使ってた‥?
「銀崎‥」
ほらまたその瞳。
「……」
黙らないでよ。
ワタシは瞳を合わせていることが苦しくて、ふいっと逸らす。
すると
「はい、お前の負けー♪だっははーっ」
いきなり豪快に笑い声をあげながら、ひーひーし始めた。
やっぱりこの人は解らない。
みんな仕事や祭りに出向いていた。
麗花も、午後からは部活の出し物に参加するからもう居ない。
黄色かった太陽の光が真南を越え、だんだんと橙を帯びてゆく。
外はとても賑やかなのに、ここだけは切り取られた異空間みたいに静かだ。
同じく私のココロもとても静かで穏やかで、激情や哀のココロなど異空間に置いてきたみたいだった。
そんな事を考えながら、灰色のキーキー鳴る椅子に座り、ワタシごとぐるぐる回ってみる。
滑稽な独りメリーゴーランドに、思わずふっと笑ってしまった。
その時、
「おーい銀崎」
私を呼ぶ恐ろしく低い声と、キャーキャー叫ぶ甲高い叫び声が、静かだった廊下に響く。
「おやじか‥」
今はすごくすごく会いたくない人物だ。
「だーれがおやじだっ!お兄さまと呼べっ」
勢いよくガラッとドアを開けたのは、やっぱり紫藤先生だった。
聞こえてたのか、今の。
「何ですか?ってか何なんですか?その格好」
紫がかった黒い髪の毛をオールバックで固め、襟を立てた白いワイシャツに黒い長いマント。
「あ?見りゃ分かるだろ?吸血鬼だ吸血鬼」
「はぁ。先生、仕事はどうしたんですか?」
「仕事なんか知らんっ!今日は祭りだぞっ」
えっへんと威張ったように腰に手を当てた先生は、甲高い叫び声を追い払い、ピシャリとドアを閉めた。
この生徒会室に、また静寂が戻ってくる。
「……」
何故そこで黙るかな。
おやじはじーっと私を見ていた。
「何か用ですか?」
そう聞くと、おやじはバサッとマントを翻し、対面の椅子にどっかりと座る。
「お前よぉ‥」
この人‥苦手。だって、全部わかってるような瞳するんだもん。
「何で敬語?」
「先生と生徒だからです」
「ふーん」
大して興味がないかのような返事。
「銀崎が喜んでたぞ?お前が敬語を使わなくなったってよ」
「お父さん?」
「あぁ」
ワタシ、お父さんに敬語なんか使ってた‥?
「銀崎‥」
ほらまたその瞳。
「……」
黙らないでよ。
ワタシは瞳を合わせていることが苦しくて、ふいっと逸らす。
すると
「はい、お前の負けー♪だっははーっ」
いきなり豪快に笑い声をあげながら、ひーひーし始めた。
やっぱりこの人は解らない。