ますかれーど
ひとしきり笑い終えたおやじは、組んだ足に肘を立て、頬杖をついてワタシを眺める。
まるで王様。
「おい」
眉間に刻まれたシワが一層深くなり、その瞳を細めて睨みつける。
「笑え」
「は?」
「笑ってみせろ」
なんでこう‥いちいち命令口調なのかなぁ。
昔からなんだけど。
「笑える気分じゃないんですけど」
「なにー?せっかくの祭りなのにか?可哀想なやつめー」
そしてまた笑う。
本当に解らない人だ。
少しして笑いが収まった様子のおやじは、またしても私をじっと見る。
笑いの後の静けさは妙に静かで、そして、妙に寂しい。
「ぐぇっ」
「はっ何だその声は」
それは、いきなり立ち上がったおやじが、私の頭を抑えた所為で出た声。
「手‥離してもらえます?」
「イヤだね」
強制的に下を向かされているワタシは、灰色のデスクを見つめるしかなくて。
「銀崎がよ、お前のマスカレードの写真を撮っとけってよ」
お父さん、ワタシが参加すること知ってたんだ。
「んでよ、紅澤んとこのマセガキに撮影を頼んであっから。ちゃんと会えよ?」
「マセガキ?」
「あぁ。図体ばっかりデカくなりやがってアイツぁ」
なんでかなぁ‥。
忘れようと、封印しようとすればするほど、周りはあの人の話ばかりするんだ。
「‥お前よぉ、」
おやじの声が更に低くなり、聞こえづらくなる。
「いつまでそうしてんだ?」
「それは先生が手を離してくれないからです」
「ちげーよ」
手の重みが離れても、ワタシは顔をあげることが出来なかった。
「黒姫は喜んでねぇぜ?きっとよ。笑え」
ーーーーーーー‥
心‥笑って?
ーーーーーーーー‥
声が‥出てこなかった。
「お前、今すげーぶっさいく」
おやじが、マントを翻す音を立てる。
「そのぶっさいくな顔じゃ、誰も喜ばねぇよ。マセガキも、チビっ子も」
もうすぐ夜が来る。
そしたら、マスカレードが始まる。
揺らめく炎のように
身を委ね、
煌めくメリーゴーランドのように‥惑わす。
ほら、
仮面を被って?
マスカレードが
始まるよ?
始まるよ。
始まるよーー‥
まるで王様。
「おい」
眉間に刻まれたシワが一層深くなり、その瞳を細めて睨みつける。
「笑え」
「は?」
「笑ってみせろ」
なんでこう‥いちいち命令口調なのかなぁ。
昔からなんだけど。
「笑える気分じゃないんですけど」
「なにー?せっかくの祭りなのにか?可哀想なやつめー」
そしてまた笑う。
本当に解らない人だ。
少しして笑いが収まった様子のおやじは、またしても私をじっと見る。
笑いの後の静けさは妙に静かで、そして、妙に寂しい。
「ぐぇっ」
「はっ何だその声は」
それは、いきなり立ち上がったおやじが、私の頭を抑えた所為で出た声。
「手‥離してもらえます?」
「イヤだね」
強制的に下を向かされているワタシは、灰色のデスクを見つめるしかなくて。
「銀崎がよ、お前のマスカレードの写真を撮っとけってよ」
お父さん、ワタシが参加すること知ってたんだ。
「んでよ、紅澤んとこのマセガキに撮影を頼んであっから。ちゃんと会えよ?」
「マセガキ?」
「あぁ。図体ばっかりデカくなりやがってアイツぁ」
なんでかなぁ‥。
忘れようと、封印しようとすればするほど、周りはあの人の話ばかりするんだ。
「‥お前よぉ、」
おやじの声が更に低くなり、聞こえづらくなる。
「いつまでそうしてんだ?」
「それは先生が手を離してくれないからです」
「ちげーよ」
手の重みが離れても、ワタシは顔をあげることが出来なかった。
「黒姫は喜んでねぇぜ?きっとよ。笑え」
ーーーーーーー‥
心‥笑って?
ーーーーーーーー‥
声が‥出てこなかった。
「お前、今すげーぶっさいく」
おやじが、マントを翻す音を立てる。
「そのぶっさいくな顔じゃ、誰も喜ばねぇよ。マセガキも、チビっ子も」
もうすぐ夜が来る。
そしたら、マスカレードが始まる。
揺らめく炎のように
身を委ね、
煌めくメリーゴーランドのように‥惑わす。
ほら、
仮面を被って?
マスカレードが
始まるよ?
始まるよ。
始まるよーー‥