ますかれーど
「しーんー着替え終わったー?」

「あー‥うん」


太陽は秋の木々とお揃いに着替え、その中へと溶けてゆく。

秋にしては暖かい風が、ガヤガヤとした露店の終わりを告げていた。


「心っ、なにこれーっ!めちゃくちゃ可愛いんだけどっ」


いつぞや颯斗さんに作ってもらったドレスに袖を通し、マスカレードの支度をする。

淡い桜色のこのドレス。
胸元には白いレースの帯、完全に肩が出ているチューブタイプ。ウエストから広がるスカートは、膝下まであってくすぐったい。


「心ちゃん。はい、手袋」


そう言って、肘より少し上までくる長くて白い手袋を渡してくれたのは、颯斗さん。


「ありがとう‥ございます」


着慣れない肩出しの服を着た所為か、なんだか凄く恥ずかしい。


「ん♪僕の見立てに狂いはなかったね。可愛いよ」


優しい笑顔でワタシを見つめる颯斗さんは、すごく満足そうだ。


「心っ、あたしのも見て♪」

「うわっ麗花!!」

「似合う?」


似合うよ。似合うけど‥


「足、出し過ぎ!」

「そ?」


麗花のドレスはラベンダーの色。

首から足まで割とピタッとした作りで、袖はない。

細い麗花の綺麗なボディラインがよく見える。

問題はーー‥


「スリット入りすぎじゃない?」

「そうかな?」

「見えちゃいそうだよ」

「大丈夫よ。下に履いてるもん」


そーいう問題か?


「2人ともいーぃオンナになったよなぁ」


海斗さんは、並んだワタシ達をまじまじと見ている。


「だよね。2人とも、親が親だからねぇ」

「だな」


肩を揺らしながらクツクツと揃って笑う双子。

笑い声までシンクロしてる。


「今度、デートしない?」


海斗さんが、ワタシ達2人の肩に腕を乗せながら言った。


「やめとけ海斗。タクに殴られるよ?」

「蒼にもだなっ」


そしてまた、笑い始める。







ーーーーーーーー‥







月が顔を出した。



真紅に燃えるその月は

ーーー‥フルムーン。




灼熱の満月。




それを取り囲むように

キラキラ キラキラ

瞬き遊ぶ星は、万華鏡。



仮面の準備はもう出来た?


さぁ、歩こう。

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