ますかれーど
一段、また一段と階段を降りてゆく。
マスカレードは理事長を始め、先生達が進行をするの。
だから、ワタシ達生徒会も、この時だけはただの生徒になる。
煌びやかに装飾された此処は、大聖堂。
音楽祭や歓迎会などを行う、体育館よりもかなり広いこの空間は、3学年なんて余裕で飲み込む。
ステンドグラスから射し込む、灼熱の満月の光が、パイプオルガンに反射して深紅の絨毯に散らばった。
「始まるよ、心」
「ん」
理事長である拓弥さんの挨拶が終わり、指揮者がオーケストラに向かってタクトを構える。
「心、仮面は?」
「あ、あぁ‥」
ワタシは、左目だけ隠れる白い仮面をつけた。
目の下に描かれたのは、ーー‥涙。
「これあげるよ」
顔の上半分を銀色のキラキラした仮面で隠した麗花は、ワタシの左耳に大きな羽をつけた。
「ふふ。似合う」
「ありがと」
ーー‥タクトが振り下ろされる。
最初の曲は、おとなしいソットヴォーチェ。
声をひそめて。
優しく。
ゆっくりと。
「あのっ紅澤さん、俺と踊ってくれない?」
早速、麗花にお声がかかった。
麗花はワタシの方に振り返り、心配そうな顔になる。
あ、仮面で表情は見えないんだけど。長い付き合いだからね。
「行っといで、麗花」
「でも‥」
「大丈夫。お祭りだもん」
ワタシは“笑顔”で大丈夫を伝える。
「‥分かった。お祭りだもんね?」
麗花の手を取りダンスフロアへと誘うこの人‥。
多分、本気で麗花のコト好きなんだな。
だって、すごく優しい瞳で麗花を見るんだもん。
「おぃ」
「っ、はい!」
ひらひらと麗花の後ろ姿に手を振っていたの。
そしたら、いきなり低い声が真上から響いた。
「んなビビんなよ」
忘れなければならない人。特別な感情を持ってはいけない人。
「何か用?」
右隣に並んだその人からは、煙草の匂いがした。
無感情に‥無関心に。
「おら」
「何‥これ」
シャラっとワタシの目の前に揺れたのは、
真っ青な、涙のカタチをした小さな宝石のついているネックレスだった。
「サファイア」
「え?」
「誕生石」
「あ‥」
「つけろ」
ドクン‥なんて、
鳴ってない。
マスカレードは理事長を始め、先生達が進行をするの。
だから、ワタシ達生徒会も、この時だけはただの生徒になる。
煌びやかに装飾された此処は、大聖堂。
音楽祭や歓迎会などを行う、体育館よりもかなり広いこの空間は、3学年なんて余裕で飲み込む。
ステンドグラスから射し込む、灼熱の満月の光が、パイプオルガンに反射して深紅の絨毯に散らばった。
「始まるよ、心」
「ん」
理事長である拓弥さんの挨拶が終わり、指揮者がオーケストラに向かってタクトを構える。
「心、仮面は?」
「あ、あぁ‥」
ワタシは、左目だけ隠れる白い仮面をつけた。
目の下に描かれたのは、ーー‥涙。
「これあげるよ」
顔の上半分を銀色のキラキラした仮面で隠した麗花は、ワタシの左耳に大きな羽をつけた。
「ふふ。似合う」
「ありがと」
ーー‥タクトが振り下ろされる。
最初の曲は、おとなしいソットヴォーチェ。
声をひそめて。
優しく。
ゆっくりと。
「あのっ紅澤さん、俺と踊ってくれない?」
早速、麗花にお声がかかった。
麗花はワタシの方に振り返り、心配そうな顔になる。
あ、仮面で表情は見えないんだけど。長い付き合いだからね。
「行っといで、麗花」
「でも‥」
「大丈夫。お祭りだもん」
ワタシは“笑顔”で大丈夫を伝える。
「‥分かった。お祭りだもんね?」
麗花の手を取りダンスフロアへと誘うこの人‥。
多分、本気で麗花のコト好きなんだな。
だって、すごく優しい瞳で麗花を見るんだもん。
「おぃ」
「っ、はい!」
ひらひらと麗花の後ろ姿に手を振っていたの。
そしたら、いきなり低い声が真上から響いた。
「んなビビんなよ」
忘れなければならない人。特別な感情を持ってはいけない人。
「何か用?」
右隣に並んだその人からは、煙草の匂いがした。
無感情に‥無関心に。
「おら」
「何‥これ」
シャラっとワタシの目の前に揺れたのは、
真っ青な、涙のカタチをした小さな宝石のついているネックレスだった。
「サファイア」
「え?」
「誕生石」
「あ‥」
「つけろ」
ドクン‥なんて、
鳴ってない。