ますかれーど
ーー夢を‥見たの。


その中の“私”はとても小さくて、頭より上にある金色の取っ手を一生懸命に引っ張った。

ガチャリと音を立てて開いたドアの先には、キラキラと溢れる陽の光。


私はとてとてと光へ近づいていく。



ーー~~~~♪



響くメロディー。

その光の中で、綺麗に弾ける三味線の音色。

弾いていたのは

お父さんと、拓弥さんとーー‥小さな男の子だった。


流れるような音の粒を奏でるお父さんと拓弥さんに対して、正面に座ってる男の子。

その子の奏でる音は

ペンペンペシッ‥ベンーー‥ビーン‥


うふふ。ヘタクソ。


でも、私はそのヘタクソな音が大好きで、たたたって駆け寄ったんだ。


するとーー‥


こけっ


象牙色の絨毯につまづいた私は、わーんわーんと声をあげて泣いた。



「ボケナスだな、お前は」



そう言って、

いち早く手を差し伸べてくれたのはーーー‥




そう。

これは、ただの夢。




ただの……マボロシ。




ねえ、

私の髪を優しく撫でるのはーー‥誰?






ーーーーーーーー‥






 --麗花side-- 




あの子がさ、また‥仮面を被ったでしょう?


多分ね?
会長がそうさせた。

なんとなく分かるんだ。

会長は、わざとあの子が気づくように仕向けた。


それは、弟を護る為。


でもね?

それは間違ってるんだよ。当人たちは、それを望んでないのに‥っ


こういうことは、周りがいじっちゃダメ。手を出しちゃダメなの。


だからほら、この子たちの歯車は‥なんて歪に回転するのーー‥

ううん。回ってすらいないかもしれない。

なんて美しい仮面で飾った、なんて悲しいメリーゴーランド。


「心?」


大聖堂の中に心の姿が見えなくて、あたしは迷わず此処へ来た。


「紺野‥千秋?」


心がいつも座っている赤いベンチに、ウサギの後ろ姿が見えた。


「ふっ。よく判りましたね」


後ろへ振り返って笑うその口元は、紛れもなく紺野千秋。


「なんとなく‥」


ゆっくりと近づき、横に立った。するとーー‥


「心っ!?」

「しー。先輩、声デカいですよ」


そこには、紺野千秋の膝ですやすやと眠る心がいたんだ。


その頬には、幾筋もの
涙の跡が見えたーー‥



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