ますかれーど

--心side--

終焉を告げるタクトが、最期の一振りを奏でる。

湧き上がる歓声と拍手は、大聖堂を壊れんばかりに埋め尽くす。



終わり‥終わり‥



マスカレードは、もう‥終わり。





「心‥」



自らの黒い仮面を外した彼は、穏やかに優しく微笑みながら“私”を見てる。



「行っておいで」



背中に触れた冷たい指先は、ポンと“私”を前へ押し出した。

この一歩を踏み出してしまえば、もう振り返ることは出来ない。


ーー‥許されない。







「紺野くん‥」



後ろに感じる少し大きくなったキミ。



「ありがとう」



キミの方が、ずっとずっと大人だ。



「それと、」

「ん?」

「‥ごめんなさい」

「ん‥」



キミと、出逢えて良かった。

キミと、同じ時を過ごせて良かった。



いつかまた、お腹を抱えて笑いながら話すことが出来るかな?





ごめんね。
ごめんね‥




ありがとう。





振り向かない。


“私”は

一歩、また一歩と前に進む。



あなたの元へ。








ーーーーーー‥







たくさんたくさん傷つけた。


私が弱かったから。

私が仮面に頼ってばかりだったから。



それでもキミは、笑って背中を押してくれたんだ。




青の世界で最も深く、
最も高貴な色。


それは、

全ての光を飲み込むけれど、全ての色を鮮やかに魅せる。



そんな、美しい紺色に

今宵もまたキラキラと

金や紅や蒼たちが

燦然と光り輝いている。



瞬くそれらは、

笑っているの?



それともーー‥






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