ますかれーど
「なにしてくれちゃってんのよっバカ兄貴!」

「な‥なんだよイキナリ」

「あたしが何を言いたいのか、兄貴が1番よく分かってるでしょっ!?」


またしても力強く店の扉を閉め、ずかずかと近づいてくる鬼。

今までの中で1番怖ぇ‥。



「ちょっとレイ、ドア壊さないでよ?」



クスクスと楽しそうに笑うみー姉は、レイ用のコップに水を注いで差し出した。



「飲んで落ち着きなさい」



差し出された水を勢いよくゴクゴクと音を立てながら飲み干したレイは、コップをカウンターに戻して口を拭う。

そして、俺と同じ瞳をゆらゆらと光らせて俺を睨んだ。

それは、今にも泣き出してしまいそうで。



「バカヘタレ兄貴‥」



一転して弱々しくなったレイの言葉は、何故か俺のココロに悲しく響く。

何かがクッと心臓を掴んで、止めてしまいそうなくらいだった。



「何があったの?レイ」



その先を聞きたくなくて、俺はまたカウンターに額をつけて瞳を逸らした。



「……兄貴、心をフったんだよ」

「あ?‥なんだって?」

「心がやっと兄貴に向かって歩き出して、その勇気を振り絞った究極の第1歩を、綺麗サッパリぶったぎったんだよ!このバカヘタレハゲはっ!!」

「ハゲじゃねぇ!」

「言っとくけどハゲ兄貴。あたしは心の味方だからねっ」



んなこたぁ分かってんだよ‥。



「心があんな顔するのは、兄貴のせいなんだからね」



ほら。俺はまた何も言えねえんだ。



「早く迎えに行ってやりなよ‥っ」

「は?」

「早く迎えに行けってばバカヘタレハゲ兄貴!」


胸ぐらをつかんで俺を揺さぶるレイの瞳からは、大粒の涙がこぼれてた。




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