ますかれーど
レイがこんな風に泣くなんて‥。16年も兄貴やってきて、初めて知った。
目の前のグラスの氷はもう形をなくし始め、カランと音を立てて体制を変える。
滑る水滴をなぞりながら、俺の頭を支配するのはあいつのこと。
「でも俺、あいつの為に何もできねぇし‥」
無力を呪う。
何かが出来る奴を羨む。
あいつを光へと導けるのは、俺じゃない‥。
「イイんじゃない?何もできなくったってさ」
カウンターに頬杖をついたみー姉は、ふわりと優しく微笑んだ。
「そんなバカヘタレハゲを、心は選んだんでしょ?好きだって言ったんでしょ?」
言ってることはグサグサ刺さるけど。
「そーだよハゲ!あたし達には無利益かもしれないけど、心は何かを受け取ったんじゃないの!?だから惹かれたんじゃないのっ?」
兄貴の威厳なんて、本当に皆無だけど。
「何も出来ないって決めつける前に、聞いてみたら?あの子にさ」
砕いて散らしてパンドラへと葬った俺のココロ。
固く堅く封をして、押さえつけた。
その想いはどんどんどんどん膨らんで、フタを押し開けようとしたけれど。
俺は更に抑え込んだ。
やがて想いは焦げついて、もう決して爆ぜることはないと思っていたんだけどーー‥
「レイ‥あいつ、何処に居る?」
立ち上がってみるのも良いのかもしれない。
「兄貴‥」
立ち上がって、前を見て、歩いて。
「いつものとこに居るよ」
ココロは雨降り。
まるで泣いているように前が見えないけれど。
「行ってこい、クロ」
お前はまた、俺が泣き止むのを待っていてくれるだろうか。
「行ってくる」
もう一度‥
もう一度、言ってくれ。
そしたら俺も、素直になれる気がするから。
「あ、それと」
今度こそーー‥
「俺はバカでもヘタレでもハゲでもねぇっ!!」
ーー‥お前を掴まえる。
目の前のグラスの氷はもう形をなくし始め、カランと音を立てて体制を変える。
滑る水滴をなぞりながら、俺の頭を支配するのはあいつのこと。
「でも俺、あいつの為に何もできねぇし‥」
無力を呪う。
何かが出来る奴を羨む。
あいつを光へと導けるのは、俺じゃない‥。
「イイんじゃない?何もできなくったってさ」
カウンターに頬杖をついたみー姉は、ふわりと優しく微笑んだ。
「そんなバカヘタレハゲを、心は選んだんでしょ?好きだって言ったんでしょ?」
言ってることはグサグサ刺さるけど。
「そーだよハゲ!あたし達には無利益かもしれないけど、心は何かを受け取ったんじゃないの!?だから惹かれたんじゃないのっ?」
兄貴の威厳なんて、本当に皆無だけど。
「何も出来ないって決めつける前に、聞いてみたら?あの子にさ」
砕いて散らしてパンドラへと葬った俺のココロ。
固く堅く封をして、押さえつけた。
その想いはどんどんどんどん膨らんで、フタを押し開けようとしたけれど。
俺は更に抑え込んだ。
やがて想いは焦げついて、もう決して爆ぜることはないと思っていたんだけどーー‥
「レイ‥あいつ、何処に居る?」
立ち上がってみるのも良いのかもしれない。
「兄貴‥」
立ち上がって、前を見て、歩いて。
「いつものとこに居るよ」
ココロは雨降り。
まるで泣いているように前が見えないけれど。
「行ってこい、クロ」
お前はまた、俺が泣き止むのを待っていてくれるだろうか。
「行ってくる」
もう一度‥
もう一度、言ってくれ。
そしたら俺も、素直になれる気がするから。
「あ、それと」
今度こそーー‥
「俺はバカでもヘタレでもハゲでもねぇっ!!」
ーー‥お前を掴まえる。