ますかれーど
光と闇は、対等で対照。

でも、その2つが存在しているからこそ、お互いがお互いを引き立て合って、双方が美しく見える。

その2つが存在しているからこその、人間。


たまには、ラルゴのテンポで歩こう?

1歩、また1歩と、空を見上げながら。


ーー‥歩こう?








ーーーーーーーー‥








いつの間にか、重く低い雲が空を覆っていた。

でもそれは、俺の上だけ。まるで、このココロを映しているみたいだった。

東の空が白み始めて、秋の風はさらさらと冷たい。


お前は、こんな中まだあそこに居るのかーー‥


気持ちは急くけれど、身体は言うことを聞かなかった。


ーー‥怖い。


こんな俺だけど、お前は受け止めてくれるだろうか。




落葉樹はヒラヒラと葉を落とし、天蓋は灰色の雲一色。

それでも夜の光がどこからか射して、赤いベンチがよく見える。


そこに、膝を三角に折りたたんで顔を埋めている女の子。


真っ黒でよれよれの髪に、淡いピンクがよく似合う真っ白な肌。



俺、なんて声かけていいのか分かんなくて、しばらくそっと後ろに立ってたんだ。そしたら‥



「くろ‥と」



俺の、名前?


よく見れば、だんだんと右に傾きかけているこいつ。



「あっぶね」



膝を抱えながら、まるでダルマかコケシみたいに倒れそうになったこいつを、慌てて押さえる。



「すー‥」

「なんだこいつ‥寝てんじゃん」



俺は、だんだんと重くなってくこいつの隣に座り、膝に頭を置いた。



「寒そ」



着ていたジャケットをこいつに被せる。すると‥



「ふあ?」



じゅるりとよだれを拭きながら、その大きな瞳を開けたこいつ。



「きったねぇなお前」



俺がそうやって声をかけると、こいつは仰向けになって目をぱちぱちさせた。



「あれ?玄‥?居たの?」

「お前それ‥結構ヘコむっつったろ?」



目をこすったこいつは、コロンとまた向きを変えて俺の腹の方に顔を向けた。



「まだ寝んのかよ」

「うん」

「あっそ」

「玄、あったかい‥」



血の巡りが恐ろしいくらいに早くって。

こいつに聞こえてしまうんじゃないかと、そわそわした。


無防備に目を閉じるこいつは、今、何を思ってるんだろうか。



「玄‥」

「あ?」

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