ますかれーど
玄の涙に呼応するように、灰色の空もポツリポツリと泣き始める。
「俺、心が好きだっ」
耳元で響くその言葉の意味を、すぐに理解するには容量が足りなくて。
「え‥誰が、誰を?」
空耳ではないかと聞き返してしまう。
「俺が、お前を好きなんだっ」
ぎゅーっと強くなる腕の力は、ちょっとだけ苦しくて。
「玄が‥私を‥?」
これは、夢の続きなのかなと疑ってしまうけど。
「あぁ‥」
鼓膜を揺らす低い声も
私を抱きしめる筋肉質の腕も
サラサラとした紅茶色の髪の毛も
ーーー‥全部、本物。
「え‥っと、くろ‥」
「うるせっ黙れ」
大きな手で押さえつけられた後頭部は、動かすことができなくて。
「ん‥っ」
玄の顔がすぐ目の前にあるだけでも心臓が忙しなく動くのに。
優しく触れた唇は、更に更に早鐘を打たせる。
その重なった唇から、ドキドキが伝わってしまいそうだった。
雨はだんだんと強くなってく。
まるで、私たちをこの中に閉じこめようとしているみたいに。
2人しかいない世界。
「ーー‥心」
キスの合間に呼ばれる名前に、お腹がきゅーって苦しくなった。
角度を変える度にする
しょっぱい味は、
玄の涙?
それとも
私の涙?
もう、分からなかった。
雨が‥雨がーー‥
「なんか‥すげぇ雨だな」
「うん。痛いね」
ほんとはもう少し繋がっていたかったんだけど、緑の天蓋をなくした木々たちは、雨をストレートに招待する。
ーー‥痛いくらいに。
「とりあえず、うちに帰るか」
「うん」
そう言って立ち上がった、その時‥
「わっ何?」
くるんと視界が回って、玄にお姫さま抱っこされた。
「お前、靴擦れしてんだろ?」
「え‥なんで知ってるの?」
「足音」
靴擦れをした足で、玄の側を歩いたのは‥あの時しかない。
気にかけていてくれたの?
なんだか、そんな小さなことでも心臓がドクドクとうるさくて。
押さえるように、玄の首へと自分の腕をまわした。
「お前‥ヒールが俺の背中に刺さってんだけど」
「気にしない♪」
ゆらゆら、ゆらゆら。
降りしきる大粒の雨の中
愛しい人の腕の中
私のナカは、笑顔がいっぱいになっていた。
「俺、心が好きだっ」
耳元で響くその言葉の意味を、すぐに理解するには容量が足りなくて。
「え‥誰が、誰を?」
空耳ではないかと聞き返してしまう。
「俺が、お前を好きなんだっ」
ぎゅーっと強くなる腕の力は、ちょっとだけ苦しくて。
「玄が‥私を‥?」
これは、夢の続きなのかなと疑ってしまうけど。
「あぁ‥」
鼓膜を揺らす低い声も
私を抱きしめる筋肉質の腕も
サラサラとした紅茶色の髪の毛も
ーーー‥全部、本物。
「え‥っと、くろ‥」
「うるせっ黙れ」
大きな手で押さえつけられた後頭部は、動かすことができなくて。
「ん‥っ」
玄の顔がすぐ目の前にあるだけでも心臓が忙しなく動くのに。
優しく触れた唇は、更に更に早鐘を打たせる。
その重なった唇から、ドキドキが伝わってしまいそうだった。
雨はだんだんと強くなってく。
まるで、私たちをこの中に閉じこめようとしているみたいに。
2人しかいない世界。
「ーー‥心」
キスの合間に呼ばれる名前に、お腹がきゅーって苦しくなった。
角度を変える度にする
しょっぱい味は、
玄の涙?
それとも
私の涙?
もう、分からなかった。
雨が‥雨がーー‥
「なんか‥すげぇ雨だな」
「うん。痛いね」
ほんとはもう少し繋がっていたかったんだけど、緑の天蓋をなくした木々たちは、雨をストレートに招待する。
ーー‥痛いくらいに。
「とりあえず、うちに帰るか」
「うん」
そう言って立ち上がった、その時‥
「わっ何?」
くるんと視界が回って、玄にお姫さま抱っこされた。
「お前、靴擦れしてんだろ?」
「え‥なんで知ってるの?」
「足音」
靴擦れをした足で、玄の側を歩いたのは‥あの時しかない。
気にかけていてくれたの?
なんだか、そんな小さなことでも心臓がドクドクとうるさくて。
押さえるように、玄の首へと自分の腕をまわした。
「お前‥ヒールが俺の背中に刺さってんだけど」
「気にしない♪」
ゆらゆら、ゆらゆら。
降りしきる大粒の雨の中
愛しい人の腕の中
私のナカは、笑顔がいっぱいになっていた。