ますかれーど
「ーーきさんっ」



んぁ‥?



「銀崎さんっ!?」



眠い目をこすると、目の前に見えたのは、真っ青なアイシャドウに真っ赤な口紅のふくよかな女性。



「あなたが居眠りだなんて珍しいわね?古文には興味ないのかしら」



若干、カンにさわる声色と、その口調が嫌われている国語教師。



「すみません‥」

「まぁいいわ。もうチャイムも鳴るし」



時計を見ると、終業まであと数十秒だ。



「青春の色ボケも良いけど、授業で寝るのは良くないわよ?」



そう言い放った先生を立てるかのように、ヒューだのピーだのやるぅ♪だの耳障りな野次が飛ぶ。


キーンコーンカーンコーンーー‥


放課後を告げるチャイムが鳴り、担任のおやじが「特になしっ」ってテキトーな宣言をしたHRも終わった。


あのヤツとの一件から一週間。

問題はここからだ。


ざわざわざわざわ‥



「ねぇねぇ」



ほら、来た。



「銀崎さんってぇ、千秋くんと付き合ってるのぉ?」



誰だお前は。



「清楚な顔してんのにすっげーよな」



何が。



「こんなんが我が校の副会長で良い訳?」



選んだのはあんた達だし。



「頼めばヤらせてくれるってホント?」



誰が言ったんだよ。



「千秋くんに近づかないで」



願ってもないお申し出です。



「ちょっと頭が良くて美人だからって、調子のらないでよ」



はぁ‥疲れる。

バンッッ!!



「ちょっと!なんとか言いなさいよっ」



目の前で叩かれた机の音が教室に響くが、そんな音、すぐに吸収されてしまう。

放課後だというのに、まるで珍獣でも見られるのか?と勘違いしているような人の数。


一週間この調子。


ウザい。

邪魔。

くどい。

めんどくさい。


例のアイツは、どうやらかなりの人気者だったようで。

ファンの子達からの罵声を聞く限り、

“私”が“彼”に、無理やり手を出したことになってるらしい。


はは。もう、笑うしかないよね?



「何 笑ってんのよっ!!なんとか言いなさいよね!」

「な・ん・と・か
はい、これで満足かしら?」

「こんっのーー‥」



どうやらこのお返事は、彼女達の逆鱗に触れたようで。

バッシーンっ!!

ガターンッ!


一発、殴られちゃった。
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