ますかれーど
お父さんは言葉数が少ない。だから、わかんないんだよ。

何でもその透き通った瞳で語ろうとしないで。

私と同じ蒼い瞳。
それを向けられるだけで、責められてる気がするの。


お母さんの身体が弱くなったのは、私の所為。

兄弟が生きて産まれてこなかったのは、私の所為。

わかってる‥。
わかってるからっ!


そんな瞳‥向けないで。

胸が引き裂かれて、“私”が壊れてしまいそう。


同じ色の瞳を受け継いでごめんなさい。

あなたの大事な人の寿命を縮めてごめんなさい。


産まれてきて‥ごめんなさい。



部屋に入っていくお父さんの背中を見ながら、そんなことをぐるぐる考えていた。



パタン‥


ーーバッターンッ!




え゙っ!?

閉まったはずのドアがまた開いた。

しかも、ものすごい勢いで。


これには私も紅澤兄妹も、すごいびくっとしたってば。



「心っ!!」

「心ちゃんっ!」



血相を変えて走ってきたのは、紅澤夫婦だった。



「心っ!流血したって!?どれ?どこ?」



ペタペタと必死に傷を確認する優花さん。



「これじゃダメだって!蒼っ!!お前ん家のその救急箱にもっとガーゼあるかっ!?」

「パパ!先にうがいさせよ。心、洗面台に行ってて」

「あ、うん」



私は、言われるがままに洗面台へと歩き出した。



「麗花!買い物に行ってきて!心、何が食べられる?」



あーー‥

あっちもこっちも早口が行き交うこの場に、完全についていけなくなってる私。



「あーなんか見繕って買ってくるよ」



一緒にあっけに取られていたはずの麗花は、この場に順応し始めてるみたい。



「あ、ありがと。麗花」



麗花が私の背中を触ったことで、ようやく戻ってきた私の魂。


ペシンッ



「おら!クロっ!!いつまでボケっと突っ立ってんのよっ。心にうがい薬を出してやって!!」

「お?‥あ、あぁ」



優花さんにデコピンされた玄は、マヌケ声を出して返事をした。



「心、痛いかもしれないけど、ばい菌が入るよりは良いよね?よく濯いできな」



凛々しい綺麗な笑顔を私に向けた優花さん。

その後ろで、右に行ったり左に行ったり、大きなお腹を抱えながら、うろうろしてるお母さんが見えた。



「おら、心!行くぞ」

「あ、うん」
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