ますかれーど

--玄side--





レイからメールがあったんだ。

『心が怪我した』

って。レイのメールはいつも簡素だから、どこをどうどのくらい怪我したのか‥さっぱりわかんね。


返信もこねぇし、俺は気が気じゃなかった。



もう返信なんか待ってらんなくて、バイクを飛ばして帰る。


玄関の扉を開くと、父さんも母さんもわたわたしてた。



「あ、お帰りクロ。ねぇっうちの救急箱しらない?」

「ママぁーっこっちだって」



心はまだ帰ってきてないみたいだった。



バンッッ!!



血相を変えて、息を切らせて、玄関の扉を破壊しかねない勢いで開けたのはーー‥



「大丈夫かっ!!」



蒼さんだった。


その手には、緑色の十字架が書いてある白い箱。

それを大事そうに持っていたんだ。



「蒼っ!お前んちの救急箱は!?」

「ある。ほらっ」


「心はきっと大丈夫よ。もうすぐ麗花と帰ってくるはずだから。みぃは?」

「あー‥途中で置いてきちまった‥」

「んもぅ‥パパ、心が帰ってきたらお願いねっ?私、みぃを迎えに行ってくるからっ!!」



「お腹おっきいのを1人で残してくるなんてっ」って、ブツブツと言いながら出て行った母さん。



俺は、少しの間キョトンとするしかなかった。


父さんと母さんが、あんなに慌てる所なんて見たことない。



っつか、蒼さんって走れるんだーー‥

あんなに血相変えて、額から汗流して、魅さんを途中で置いてくるくらい慌ててた。


初めて見たーー‥






心配‥してんだよな?


俺らは真ん中で見てるから、どっちの想いも知ってる。


ーーーー‥でも、


アイツには、全然 伝わってないんだぜ?


悲しくなる程に‥。



いつか、伝わる日が来るのかな?


いつか、その綺麗な蒼い瞳同士‥通じる日が来るのかな?



そんなことを考えながら、扉の前で心が帰ってくるのを待っていたんだ。



時刻は夕暮れのはずなのに

空はとても重くて


光なんて



見えそうにない。




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