ますかれーど
ガチャ、キィィー‥

黒い鉄製の門を開けると、まずは広い庭を通らなければ玄関には着かない。

あほみたいにバカでかい家。

これが、紅澤家。



「魅(ミイル)っ」

「蒼っ♪」



お母さんのことを、相変わらず名前で呼んだ人。
あれがお父さん。


歌を世間に出していて、結構な有名人。

ツアーとかで昔から家にいない事が多いんだ。


ーー‥あほみたいにバカップルな両親。



「お久しぶりです」



ニッコリと笑顔を見せる私。



「おぉ」



この人は私の名前を呼ばない。



だいっきらい。



天然の蒼銀髪。

人の目を惹きつけるような容姿。

吸い込まれそうな、蒼っぽい瞳。


私は、その蒼っぽい瞳を受け継いだ。



だいっきらいだ。



「しーんー♪」

「麗花‥」

「相変わらずだね。あんたら親子は‥」

「ははっ」



変わる時が‥
ーー‥来るのかな?



「麗花ー!心ー!手伝えー♪」

「「はぁーい!!」」



“私の名前”を呼んでくれる人。

あの人は、麗花のお母さん。



「優花(ユウカ)さん、これあげます」



渡したのは、家から持ってきた野菜とか肉とか。



「ありがとう。重かったでしょ?」



麗花はやっぱり、優花さんの美しさを受け継いでいる。

21歳と16歳の子供がいるとは思えない位、すごくすごく綺麗な人。



「心ちゃん?」



心配そうに私を呼ぶのは、麗花のお父さん。


紅茶色の瞳に紅茶色の髪。

これまた綺麗な人。



「大丈夫?具合悪い?」



私の両親なんかより、よっぽど私の異変に気づいて心配してくれる。



「いえ、大丈夫です」

「そ?」



ふっと笑うその瞳は、麗花と同じ。



「あ、拓弥(タクヤ)さん」

「ん?」

「今日‥ここに泊まっても良いですか?」



このデカい家には、部屋が6個ある。

その昔、拓弥さんやうちの両親たちが一緒に住んでたんだって。

その中の1室は、もうすでに私の部屋みたいになってる。



「ん、良いよ。ただし、蒼たちにちゃんと言っておいで」



ポンポンと軽く私の頭を叩く拓弥さん。


こんなお父さんが‥良かったな。




茜色の空には

キラキラとした星が

いつもの場所に

並んでゆく。

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