ますかれーど
朝陽を浴びる紺色の瞳の男の子。

その無邪気な笑顔に、私は吸い込まれていくんだーー‥


無意識に伸びた右手をそっと掴み、指を絡めた彼。



「行こっか」



そう言った彼の横顔。少し、赤い気がするのは気のせい?


それから10分。
突き刺さってマス。

スッゴく鋭い視線がたくさんたくさん。



「ねぇ、手‥はなそう?」

「なんで?」



別に、また殴られるのが恐いとかそういう訳じゃない。

ただ‥私にとってはこういうのって初めてな訳で。



「また恥ずかしいの?」



彼は私の顔を覗き込みながら、クスクスと肩を揺らした。

年下のはずの彼の方が、慣れてる気がする。



「教室まで送ってく」



そう言って、靴を履き替える為に一旦離していた手を、またぎゅっと握る。


有名らしい彼。通るだけでみんながざわめく。


悲鳴をあげる子。
明らかに怒ってる子。
悲しそうにする子。

どこに行ってもついてくる、感情様々な視線の色。


当の本人は……慣れてるね。



「大丈夫?」



やっと着いた我がクラス。1年生の教室が上で良かったと思う。だって、1年生の方が視線が痛そうだから。

ーー‥もう、今日は限界かも。



「ごめんね」



私の頬を優しく撫でる彼。

その紺色の瞳は、少し悲しそうな色をしていた。


私が笑顔で返すと、
「可愛いっ♪」
って抱きついてくる。

これ、やめてくれないかな‥。


でもーー‥


私を抱きしめる腕も

頬を撫でる指先も

無邪気に笑う顔も

妖艶なオーラを放つ時も

少し‥悲しそうにする時も。

なんか、受け入れつつある自分を感じていた。


これが、好きになるってこと?

わからない。
まだ、わからない。



「心っ!!!」



凛とした声で勢い良く呼ばれた私の名前。呼んだのはーー‥



「麗花‥」



紅茶色の瞳を大きく見開いて、この光景を凝視している麗花。



「どういうコト?」



この低く低く問う声は、怒ってる証拠。

きっと、私が怪我を負う羽目になった“理由”と一緒に居ることに驚いてるんだと思う。



「誰?」

「親友。幼なじみなの」



麗花には、ちゃんと説明しなきゃ。



「あのね、麗花っ」

「俺から説明する」



私を遮って一歩前へ出た彼。

この空気が‥恐い。
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