ますかれーど

--心side--

ゆらゆら ゆらゆら

チューリップ

だんだんと色褪せて

だんだんと朽ちてゆく


でもね
そのすぐ後ろには

だんだんと大きくなってく向日葵が

元気に 元気に

育ってゆく




ーーーーー‥




キーンコーンカーンコーン‥



今日の授業は静かだった。

嫌な視線を向けられることも、冷やかされたりすることもない。


逆に、避けてる感じさえする。

その方が楽だよね?


教科書をトントンとしまいながら、チャイムと同時に勢いよく入ってきた担任のおやじの‥


「本日も何もないっ!解散!!」


という言葉を聞く。

ほんとに何もないのかよっ!って、ツッコミたくなる程に、いつもと同じその言葉。


“いつもと同じ”

それが、果てしなく嫌だったはずなのに。彼と出逢ってからのこの数日、その“いつもと同じ”にホッとする。



「ねぇ心、今日なんだけどさぁ」

「ん?」



麗花が窓側の私の机まで来て、飴を差し出しながら話を始める。



「蒼さんがーー‥」

「しーんたぁー♪」



ーーーー‥は?

麗花の話をぶった切ったその高めの声。

どこから呼んだのかと探してると「あそこだ」と、麗花がクスクスと笑いながら指を差した。



「俺、これからホームルームだから待っててーっ!!」



グラウンドから叫ぶ、恥ずかしいヤツを発見。



「愛されてるねぇ」



ニヤリと目尻を下げながら、私の顔をまじまじと見る綺麗な顔。



「恥ずかしいんだけど‥」

「そぉ?ヤツはヤツなりに、気ぃ使ってるんだと思うよ?」

「え?」



私は、いまだに彼を掴みきれていない。

出逢ってから2週間くらいで、付き合い始めてからなんて、1日なわけで‥。

妖艶な紺色かと思えば、凛とした青だったり、さっきみたいな元気な黄色だったり。


よく‥わかんない。



「あぁやって、大々的に“付き合ってます宣言”をすることで、ヤツを取り巻く奴らが心に近づかないようにしてるんでしょ?」



‥麗花はすごいと思った。



「良いヤツ見つけたね」



スッと伸びてきた麗花の細い腕が、私の頭をさらりと撫でる。

夏へと変わってゆく太陽の光が麗花を射すから‥

その顔が逆光になってしまって、見えなかったんだ。

その時の麗花が、どんな表情をしていたのかなんて‥

わからなかった。
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