ますかれーど
「心太っお待たせ。行こう♪」



無邪気に笑いながら現れた彼。

よほど急いで着替えたのか、ネクタイが曲がってる。



「そのシンタってなに?」



麗花が首を傾げる。

そりゃそうだ。何が悲しくて女の子に“太”をつけるんだよ。



「“心”に“太”ですよっ麗花さん」



若干 笑いをこらえたように、声を震わせながら説明した彼。

そして、いつもながらに鋭い麗花は‥



「くっくく‥それで“シンタ”……っっ‥

あーっははははははははははっはは!」



ーー察したようだ。

それから2人でお腹を抱えて爆笑してた。私は‥笑えないよそりゃ。

私が1人でシラけていると、廊下をバタバタと走ってく人たちが目についた。


ーーなんだろ?


ふとグラウンドを見れば、校門前に人だかり。

キャーキャーだの、コソコソだの、ここまで聞こえてきた。



「あれ、なんだろね?」

「ですね。行ってみます?」



いつの間にか笑い終えていた2人は、鞄を持って歩き始めていた。



「ほら、置いてっちゃうよ♪」



優しく笑いながら手を伸ばす彼と、



「何ほけーっとしてんの、心太。ぷ‥」

「あぁ麗花まで‥」



その呼び方‥使ってみたかったんだね?クールに呼んだつもりでも、吹いちゃ台無しだってば。



靴箱からでも見える人だかり。

ほんと気になる。



「女の子、多くない?」



私の肩に手を置きながら靴を履く麗花。

ーー‥ま、いつものことなんだけど。



「校門前に、かなりのイケメンが居るらしいですよ」



どっから仕入れたのか、情報が入りました。


イケメン‥?



「心太は、イケメン気になる?」



私の顔を覗き込むように、上目で見る彼。

それがあまりに色っぽくて、私の背中がゾクリと震えた。



「気になるーっ!」



紺色に飲まれて固まってた私の横で、その紅茶色の瞳をランランと輝かせ叫んだ彼女。



「行ってみよっ心太っ!!」

「あぁ、その呼び方は定着なのね?」



“ところてん”が苦手な私にとっては、迷惑極まりない呼び方な訳で‥

ちょっと落ち込み気味な訳でーー‥

そんな私にお構いなしな麗花は、私の腕を掴んで、グイグイと校門の方へ引っ張っていく。

私‥あんまりイケメンに興味ないんだけどなぁ。
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