ますかれーど
光と闇は対等で対照

その意味が、解った気がする。

けして交わることのない、相反する物。


けして、交わることなどないーー‥



「だったらなんです?」



私を後ろに隠すようにして、いつもとは違う低い声を出した彼。

ピリピリした空気にピリピリした声が重なる。



「別に。会えてよかったよ」



“よかった”?
まったくそんな顔してない玄。‥恐い。



「あなた、誰なんです?」

「‥俺は紅澤 玄。レイの兄貴で、そいつは俺の……幼なじみだ」



玄は私の方にふっと視線を投げたけど、すぐにそれを彼に戻す。

低く響く声で自己紹介をした玄ーー‥

いつもは、私のことを“妹”って言うのに、“幼なじみ”って言葉を使ってたのが……少し、気になったんだ。



「あなたが、クロト‥」



そう呟いた彼は、背中に隠した私をチラリと見て、綺麗な微笑を浮かべた。

そして、クイッと私の右手をとって、指と指とを絡ませ密着させる。



「俺たち、付き合うことになりました。よろしくお願いします♪」



彼の笑顔は完璧だった。

さっきまでのピリピリしていた声もガラリと変わって、明るい“黄色”の彼になっていた。


すると玄は、くるりと背を向けて歩いていく。

さっきまでの恐い感じはしない。むしろーー‥



「行くぞ」



そう言った玄の声。悲しそうに聞こえたのは、私だけ‥?



「ねぇ兄貴、私たちを待ってたわけ?わざわざ?」

「あぁ。蒼さんが、パーティーにそいつも連れて来いとよ」



ーー‥え?パーティー?彼も一緒に?

私がキョトンとしていると、



「なんだよレイ、言ってねーの?」

「あ‥忘れてた」



「ごめんごめん」と言いながら、徒歩5分の道のりで説明してくれた麗花。


今日はお父さんの出発日だから。

恒例の、紅澤家でのパーティーをやるみたいです。


でも‥なんで彼まで呼ばれたんだろ?

今朝、お父さんが彼を殴った事といい、何か‥あるのかな?



「‥ねぇ、心?」

「ん?何?」

「あ‥やっぱいーや。ちゃんと、蒼さんに行ってらっしゃい言うんだぞ?」



綺麗に笑って私にデコピンした麗花。

玄を引きずりながら、走って先に行っちゃった。
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