ますかれーど
頬を滑ってゆく細い指先から伝わる、

あなたの‥熱。


ふっと見惚れてしまうほどに綺麗な微笑みを浮かべる彼に、きゅんとするのは何でだろ?


持ち上げられた顎。
親指でそっとなぞられる唇が、だんだんと熱を持ってゆく。



「心は、俺のこと好き?」



ーー‥好き?

それって、どんな感情?


こんな風に、触れられたところが熱くなったり、身体の中がきゅぅんってなったりすること?


わからなかった。
答えられなかった。



「ふふっアホ面♪」

「ふぇ?」



いきなり変わった彼のオーラに対応しきれず、変な声が出た。

柔らかくなったその雰囲気は、また私の知らない彼だった。



「だんだん好きになってくれれば良いから」



ふわりと私の背中に手を回して耳元で囁く声。



「心太は、俺のモノだもんね」



そう言うなりバッと立ち上がった彼が、「今は‥」なんて声を零していたなんて、私には聞こえてなかったんだ。



「生徒会の仕事、行っといで?俺は先に帰るね」



離れていく彼‥。
ふっと綺麗な笑みを残して去っていく。



「待って!!」



気が付くと、私は彼を呼び止めていた。

驚いたような、不思議そうな顔を私に向ける彼に、私は戸惑った。



「何?」

「え‥と」



呼び止めた理由なんて、私でさえもわからない。

ただなんとなく‥
そう。なんとなく。


そんな思考がぐるぐる廻ってる私をジッと見ていた彼は、次第に肩を揺らして笑い始めた。



「やっぱり面白いね♪心太は」

「あ、えと‥特に理由は……ない」

「ん。それで?」

「口が‥勝手に」

「ふーん。で?」



何を言っても、彼は疑問で返してくる。

呼び止めたのは私。私なんだけどーー‥



「ぅー‥」



理由が見つからない。だめ。ギブアップ!!

私が白旗をあげた時、笑いが収まったような彼は、優しい眼差しを私に向けた。



「心太」

「う?」

「うちに来る?」



おぉ!


そして私は、紺野くんのお家にお邪魔することになりました。


伸ばされた左手に、初めて私から手を置いて。


きゅっと握ったその手は、とてもとても大きかった。


男の子だ。

初めて意識した男の子。

この、なんだかワクワクしている感情を“恋”と呼ぶのかもしれないね。
< 76 / 207 >

この作品をシェア

pagetop