ますかれーど
そのドタドタの主は、すぐそこの角で止まった。


私からは背中側だから見えないけど、

彼の顔から笑みがスゥっと消えたところを見ると、招かれざるお客さまみたい。



「ちーあー!!」



若い女の子のキンキンした声が、この広い廊下に響いて耳が痛い。


恐らく、一歩ずつ私たちへと近づいてきてる彼女。

痛いほど刺さってるよ。視線が。


すると紺野くんは、呆れたような‥軽蔑の意を表したような顔をしながら、ふぃっと彼女から目を逸らし、目の前の扉の取っ手に手をかける。



「待って!ちあっ」



どこか必死さを感じるその声。

そちらへ顔を向けようとしたその時‥




ガシッと後頭部を掴まれ、深い 深いキスをされた。



人が‥見てる前で‥



いつもとは違う、強引で奪うような、わざと音を立てて見せつけるようなキス。


何も考えられなくて

酸素が足りなくて

頭が真っ白になってゆくーー‥





私はそこで、意識を手放した。






ーーーーーーー‥





人は誰でも、

いくつかの仮面を
被っているわ。


その中で、

本当の自分を見つけてくれるのは

何人いるのかな?




私は、

本当のあなたを

見つけられるかな?




あなたのことを

もっと もっと

知りたいの。




繋いだ手

絡んだ指先


あたたかいーー‥





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