ますかれーど
『ひ‥くっ‥』


どうしたの?


『う‥るさいっ』


ないてるの?


『泣い‥てなんかっないっ』


でも‥


『どっか行けっ!』


ズキン‥


『お前‥が居ると、苦しい‥っ』


‥ズキン、ズキン


『なんなんだよっ』




苦しそうに歪める顔が頭から離れない。

濡れた光溢れる紅茶色の瞳は、いつもワタシを見てくれた。


あなたは

なんで

泣いてるのーー‥?






ーーーーーーーー‥





目を開ければ、暗がりに焦げ茶色の高い天井がぼんやりと見える。


私ーー‥?


横たえられたそこは、ふかふかのベッド。


ふ‥と手に温もりを感じて左を見ると、私の手を掴みながら丸まって寝ている男の子がいた。

あどけない寝顔で、すーすーと心地よいリズムの寝息を立てている。


夜に照らされて青く光るサラサラの髪。

そっと触れてみる。


ふふ。子供みたい。



大きな窓の外を見れば、もう夜の帳がおりていた。

チカチカと光る、夏の星座。


今‥何時だろ?


彼を起こさないように、そっと上半身を起こして辺りを見回す。

私の荷物は、彼側のベッドサイドの椅子の上にあった。


んー‥取るのは難しいかな?


私はそ‥っと、繋がれた手を離そうとした。彼の指を1本ずつ、1本ずつ、開いていく。


そーっと、そーっと


ーー‥離れた♪


離れた彼の手は、きゅっとグーになった。ふふ。可愛い。


私は右側からベッドを降りて、鞄を取りに行く。

そう言えば‥なんで鞄があるんだろ?

彼を追いかけたあの時、鞄は持ってなかった気が‥。


2人で寝てもかなり余るくらいの広いベッドをぐるりとまわり、鞄から携帯を取り出した。

時刻は21時。

結構、遅くなっちゃったな‥。


メールは3件。

麗花から、「魅さんには絡済みだよ。生徒会の次の仕事は明後日だって」っていうメールと、


お母さんから、「今日は優花が家に来てるのよ」ってのと、


「鞄、忘れてっちゃったから、届けさせたんだけど‥ちゃんと届いてる?」って生徒会長からのメールでした。



それぞれに返信をしていると、カチカチとボタンを押す音がうるさかったのか、もぞもぞ動き出した彼。

ーー‥そして



「心っ!!!」



いきなりバッと起き上がり、私の名前を叫んだ。

びっくりしたぁ。
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