ますかれーど
こんなに立派な洋館なのに、

こんなに立派なダイニングなのに。


用意してくださったご飯は‥純和風だった。


びっくりしすぎて、逆にふふふと笑みがこぼれる。



「何笑ってんの?」

「うぅん。和食だぁって思って」

「好き?」

「好きっ」



なんだか嬉しくて、笑顔で元気よく返事をした私。

すると、紺野くんは下を向いてしまった。



「どうしたの?」

「え?や、何でもない。食べようっ」

「「いただきます」」



おぉ。紺野くんもいただきますするんだぁ。なんて驚いていたその時、私の目に入ったのはーー‥



「わ、ナス……」

「心太、ナス嫌いなの?」

「うん‥」



ご飯をいただいている身でこんなこと言うなんて間違ってる。そんなこと分かってるんだけどーーこれは譲れない。



「意外。好き嫌いなんてなさそうなのに」

「ん~‥結構あるかも」



そう言いながら、ほいっと彼のお皿にナスを渡す。



「食べてみれば?美味しいよ?」



なんの躊躇いもなく、若干見せつけるようにナスを口へと運ぶ彼。



「そーゆー紺野くんこそ、嫌いなものないの?」

「俺?」



視線をテーブルに落とした彼は「ぅ゛~‥」と唸りながら、すすすっと1つの小鉢を私の方へと寄せた。



「かぼちゃ!?」

「‥うん」



かぼちゃこそ、私の大好きな野菜ランキングの上位に入るのに。



「なんで嫌いなの?」

「ぅ‥かぼちゃってさ、」



彼は、私の前に差し出した小鉢を睨みながら、ふてくされたように話す。



「かぶるもんでしょ?」



ーーーーん?



「被るやつを食べるなんてナイよね?」



彼は‥何を言ってるのかな?



「心太は昔、被んなかった?かぼちゃ。

最近ようやくファントムマスクになったけど、昔は嫌で嫌でさ」



んー?



「そうだっ!今年は心太も出ようよ♪」



いつになく饒舌に話してくれる彼に嬉しさを感じながらも、頭の中はハテナでいっぱい。

質問をしたら水をさしちゃうかな?



「心太?」

「えっ?」

「どうしたの?」



それでも、聞かずにはいられない。



「んと‥かぼちゃって、どこで被るのかなって思って」



すると彼は、



「ハロウィンだよ」



って、その綺麗な顔をくしゃって崩して笑った。
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