ますかれーど
そう答えると、



「やっぱりそうでしたかっ!!」



と、なんだか嬉しそうに飛び跳ねた。

お姉さん‥可愛い。



「あいゃ‥すみません」



急にしゅんとなったお姉さんに、ふふっと笑ってしまう。



「なんで知ってるんですか?紺野くんですか?」

「いえ、千秋様は銀崎様のことを“心太”とお呼びになるので」



あー‥家でもそう呼んでるんだーふーん。



「千秋様はいつも心太様のお話をしていらっしゃいますよ?」

「お姉さんまでヤメてくださいー」



クスクスと口元に手を当てて笑うお姉さんは「すみません」って言いながらも、まだ笑ってた。



「心で良いです」

「はい。では、心様」

「あ、様は嫌です」

「ふふふ。心さん?」

「はい♪」



なんか、お姉さんはお姉ちゃんみたいだ。



「みーに聞いた通りの方ですね」

「え?」

「煎餅屋のみーをご存知でしょう?夜はバーテンもやってますが」



みー姉!?



「みー姉のお知り合いですかっ!?」

「はい。高校の時からの親友です」



世間は狭いなぁって思ったのと同時に、なんか親近感が湧いて嬉しくなった。



「お姉さんは‥」

「凉です」

「はい?」

「凉ってお呼びください」

「あ‥凉さん?」



にっこりと笑うその顔は、凛々しく美しかった。



「凉さんは、この家のメイドさん‥なんですか?」

「はい。メイド‥ってガラでもないので、いつもスーツですが」



黒い細身のスーツがよく似合う、綺麗な人。真っ黒なショートヘアが凛々しくなびく。


お風呂場まで、結構歩いたと思う。

でも、凉さんとの会話が楽しくて時間の感覚なんてなかった。


お風呂場はとても可愛くて、白くて広いバスタブは、黒い猫の足型の支えだった。

どこの貴族だよっ!って突っ込むと同時に、女の子向けだなぁ‥と。

ーーあの子の‥?


そういえば、あの子の話‥結局してくれなかったな。

うまくはぐらかされた感じだ。


あの子‥すごくすごく紺野くんのコトが好きみたいな感じだった。

だからこその、あの言葉と視線。

思い出しただけで身震いがする。誰なんだろう‥

気になるけど、聞いちゃいけない?

紺野くんの態度が、そこに触れないでって言ってる気がする。

お風呂でたら凉さんに聞いてみようかな。
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