ますかれーど
ズキズキズキズキ


な‥に?
なんなの?

心臓が、イタイ。



紅澤家の玄関扉におでこをつけて、左胸を掴む。




『あ?知らねぇな』




いつもと変わらないあの声なのに‥

ーーっ


あの人は誰?
新しい彼女?



今までは、彼女が出来たって、私に対する態度は変わらなかった。

もう1人の妹だよって、笑って紹介してくれたのに。



『知らねぇな』



完全に私をなかったことにしたような言い方だった。

まるで、玄の中で“私”の存在を消したかのような……。



「ーーっっ」



なんでこんなにダメージ受けてるんだろ。私。


よく考えて?
これが当たり前じゃない?

玄とは本当に他人だし、今までの彼女に“妹”だって紹介してた方がおかしかったんじゃない?


そうだ。

そうだよ。


何も気にするコトなんてない。

何も。何も‥。





バンッ


ゴンッ!!



「イっ‥!!」

「あれ?心?ごめんごめん。そんなとこに居るなんて思わなくってさ」



勢いよく扉が開いたもんだから、その扉におでこをつけてウダウダしてた私は、大ダメージを受けた。



「ってか、こんなとこで何してんの?」

「お母さんから、みんなこっちに居るよってメールがあったんだよ」

「あ、そっかそっか」

「麗花こそ、そんなに勢いよく扉を開けてドコ行く気だったの?」



すると麗花は、ふっと悲しそうな顔で‥



「兄貴に‥会った?」



ドクン‥



「うん。門のとこで」

「そ‥」



ふっと視線を落とした麗花は、今度はまじまじと私を見た。



「なにこのワンピース!すっごい可愛いじゃんっ」



一転、太陽みたいにキラキラした笑顔ではしゃぎ始めた麗花。



「そんな女の子っぽい心を見るの、初めてかもっ」

「そうかな?」

「そーいうのも似合うと思ってたんだよねぇ♪魅さんにも見てもらおっ」



そう言った麗花は、私の腕をグイグイと引っ張って、リビングへと向かった。





一刻ごとに低くなる空を

かなりの湿り気を帯びた風が舞い、

さわさわと怪しく木々を揺らしている。






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