ますかれーど
今日は泊まることにして、私と麗花はずっと夜中まで喋っていた。


変わってしまった玄のこと、

お母さんのお腹のこと、

お父さんのCDも聴いたし、

一緒に三味線も弾いてみた。


紺野くんとのことも、忘れずに報告。



「ふぅーん。その、姫衣ってコ、気になるね?」

「う‥ん」

「でも、紺野千秋は間違いなく心一筋だから大丈夫よっ」



麗花のこの自信は、どっからくるんだろ?


紺野くんのあの表情も気になる。

玄の変わりようも気になる。



近くにいるようで、何も知らない。


それが寂しくて。

なんとなく‥2人とも離れて行ってしまうような気がして、ココロがざわざわした。



「心‥」



麗花は、私の頭をくしゃくしゃと撫でながら、優しい笑顔を見せる。



「気にすんな」

「え?」

「人が人を全て理解するなんて、できっこない」



麗花ーー‥



「変わってしまうことも、知らない一面を持っていることも、理由がある。

ただそれを、悟られたくないとか、今は言えないとか、それだけのコトだと思うよ?」



真っ直ぐに蒼を射抜く紅茶色。

なんて強く、
なんて清らかな瞳。


迷いのないその言葉と瞳は、私のもやもやとした何かを払ってゆく。


玄が変わって、1番泣きたいのは麗花のはずなのに。

麗花は昔っから玄が大好きだからさ。

いつも仲の良い兄妹。羨ましいくらいに。


なのに……

そんな風に強く踏ん切りがつけられるのは何故?



私は何を迷ってばかりいるんだろう。


右に行っては闇に突っ込み、

左に行っては闇に突っ込み。



やっと晴れた“家族”という光が、眩しいくらいに私を照らし、今のワタシを形成する。


ワタシは、此処に居るよ。

もう、見つけられる。



「心はもう、光でしょ?」



ふふふと笑う麗花は、その瞳を緩やかに細める。



「ならさ、照らしてあげられるね?」




出逢った時から感じていた、深い 深い紺色の闇。

いつも優しかった紅茶色。今や光を失い、闇へと歩く。



近くにあるのは、
2つの闇。




「心は、心の思う通りに進みなね?」




前にも言われたその言葉。私はまだ、理解できていない。


私は確実に、少しずつ紺野くんを好きになっていってる。なのに‥


何だろ?

この、感じ。
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