Friendship《短》

俺に、父親はいない。

母さんやじいちゃんが言うには俺が産まれる前に事故で亡くなったらしいけど。

それが嘘だってことくらい、子供の俺にもわかっていた。

多分、どうしようもない奴だったんだろう。


……まあ、うちに父親がいないのはそんな理由なんだけど。

父親がいない、ということは母さんが働かなくちゃいけないということで。

母さんの仕事先がなくなるということは、うちの収入もゼロになる。


「ママがね、体を悪くしたの。だから七月いっぱいで店を閉めるって」

俺をうかがうように見ていた母さんが、小さな声で理由を説明してくれる。

その声には心配の色が滲んでいた。


“ママ”っていうのは母さんの母さんじゃなくて、母さんの仕事先の店長さんだ。

いつも豪快に笑っていたママの顔が浮かぶ。

俺にはあのママが体を悪くしているなんて、どうしても想像出来なかった。
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