;KIZUNA
『ただいま~』

って居るわけないやん。

バカかっうちは・・・


玄関の電気をつける。

電気がついた玄関はとても眩しく思えた。


あ~あ
今日も独りか・・・

台所には立ち寄らずに、階段を上る。


去年建てたばかりの小さいけど新築のうちの家。

この家になってからじゃない?

家を建てるって、悪い事がつきものってこの事かな。


ちょうど1年前に父親が出て行った。

家が出来上がって1ヶ月も経たないうちに。


この家が手切れ金がわりか??

確かにローンも何も残さず綺麗に消えて行った父親。

手切れ金って・・

浮気相手でもあるまいし。。


まぁ別に、父親に何の借りもなければ、育ててもらった記憶もない。

ある程度何不自由なく食べさせてもらった事には感謝はしてる。

感謝わな。

でもさ、悪いけどあんたを尊敬できるなんて1ミリだって思っちゃあいない。


何でって???


荷物をまとめて、離婚届けを食卓の上にそっと置き、涙をこぼした母親なんか目もくれず、玄関の扉を閉めて車に乗り込むあんたの姿。

その後、助手席の若い女とキスをして走り去って行く。

うちは部屋の窓から全部見ててんで??

父親と知らない女の濃厚なキスシーンを。

父親やで???


この男のドコに尊敬の“そ”の字があるっての???


たいして、子育てに参戦もしなかった父親に別に腹立ててるわけじゃないし、恨みもしてない。

ただ、ただ、
母親の、以前本気で愛を育んだその女の、涙を見ても動じなかったあの男だけは許せない。


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