;KIZUNA
原付はそのまま。

きっと誰かが拾うやろ。

むしろ、うちらも拾っただけやし。


歩くとすぐにネオンが見えてきた。

こんな小さい街にはここしか夜中に明かりが灯る場所はない。

「祥子さんじゃないっすか~」

「おはようございます」

「おう!毎日会うなぁ~」

そんな声が飛び交う。

毎日毎晩来てりゃー当然かっ。
自然と笑みがこぼれる。


うちは人にはすこぶる愛想がいい。

荒れ果てた母親が呪文の様に言ってたっけ・・
“女は愛嬌やで”

そこだけはあんな親でも共感できる。

愛想さえふりまいとけば、悪くは言われない。


それは麻美も同じだった。

大財閥の令嬢で、うちとは間逆の生活をしてる麻美。

だけど、うちらには共通点があった。


それは、親に相手されへん子供。


フリフリの洋服を着て、キャッチの男に絡まれて泣いてる麻美を見て、ほっとけずに手をひいた。

無言で家に連れて帰り、シャワーを浴びせて、うちの洋服を貸してやった。

そしてそのまま夜の街を連れまわした。


それがうちと麻美との出会い。


全然違う感性を持つうちらは、お互いを慰めあうわけでもなく、同情し合うわけでもなく、ただ毎日一緒にいるだけ。

相談するよーな事もなければ口うるさく言うわけでもない。

そんな関係が意外に気に入ってた。


そしてうちら二人はこの街では有名になった。

たかだか16のガキが。

うちらは堂々とこのネオンの中肩を並べる。


「ほんっとみんな祥子を見るな~」

感心したように麻美が笑う。


『毎晩来すぎやからねっ』

横目で麻美の顔を見るとなんだかホッとする。


「違うし~~~祥子が綺麗やからやし」

『麻美様には負けますけどね』


そんな事を言いながら凌也の店に着いた。
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