Heart of Melody



水無月が帰り、練習時間になった。


が、如月が来ない。



「なんなんなの、指揮者はι」


先生はまた教室を出て行った。



「はぁ……」


晴れ渡った空を見た。

風が通って、汗ばんだ体を冷やしてくれた。


蝉がうるさい。



沈んだ心を騙すためにピアノを弾いた。


ガタンッとドアに何かがぶつかる音がした。


「あっ…もう、オンボロドアね」


力強くドアを開けて来たのは水無月だった。



「どしたの?」


「忘れ物。ほら、そこに楽譜が」


「あぁ、これ?」


俺が掴んで楽譜をヒラヒラと靡かせた。


「そう、頂戴」


「ヤだね」


「はぁ?」



そこから口喧嘩。
終いには走り回っていた。


「っもう!返して!」


「ヤダー…ワッ!」


コードに突っ掛かり、コケた、と同時に水無月の腕を掴んで、水無月まで道連れ。


「キャア!」


ドサッと二人して倒れた。


どうやってだか、水無月が俺の下に来ていた。



「う、重い…長月」


全体重を水無月に掛けていたからそりゃそうだ、



「ゴメ…」


顔を上げると、水無月の顔がすごく近くにあった。




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