Heart of Melody
「………水無月はなんでここに?」
二人の静寂を破ったのは長月だった。
「弟が買い物したいって言うから渋々…」
ついて来なければ良かった。
長月を見てると、無くなったはずの意識が、気持ちが沸き上がる。
「あっ、じゃあ親待たせてるから」
うちは走った。
どうして?
なんで?
神様は酷い。
うちにそんなに、試練を与える?
足が止まった。
いつの間にか、トイレに逃げ込んでいた。
「なんで……忘れられたと思ったのに…ッ」
涙が止まらない。
長月を忘れて、師走を好きになる。それが正しいんじゃないの?
長月がうちを諦めてくれて、師走と付き合う事を望んでくれた。
そんなうちを気遣ってくれた優しい気持ちをまた踏みにじるの?
師走のあの素直で優しい気持ちをまた踏みにじるの?
酷い。酷すぎる。うち。
サイテーだ。
ケータイには、師走からのメールと、親からの着信が来ていた。