坂井家の事情
「あんた今日こそは掃除当番、サボんないでよね」

不機嫌そうな顔で悠太を睨み付けている。

目を丸くしていた悠太だったが、突然意味もなく威圧的な態度をされたことにより、少し怒りを覚えた。

「朝からウゼーやつ」

「なんですって!? 昨日みたいなことにならないように、今から釘を刺してるんじゃないのよ」

二人の間に火花が散る。

「……お前ら、喧嘩はほどほどにしておけよな」

長年の付き合いから険悪な雰囲気をいち早く察した大輔は、雑誌を掴んで背を向けた。

しかし。

「朝からエロ本なんかを見ているあんたには、言われたくないわね」

大輔へ攻撃の目が向けられてしまった。

「な……俺のことは関係ねぇだろうが。それにこれはエロ本じゃねぇよ。
昨日発売されたばかりの七宮みずきファースト写真集『limited(リミテッド)』だ!」

今度はムキになって反論した大輔と、言い争いになりそうだったのだが。

「あ! そーだ、思い出したぞ!」

悠太が突然机を叩いて立ち上がった。

今度はさやかが目を丸くする番である。
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