坂井家の事情
「そうそう。俺、悠太と同じ保育園だったんだけどさ、その頃は女の格好して通っていたんだぜ。
違うクラスで名前もよく知らなかった頃は、本当に女かと思ってたもんな」
「! あれは、母ちゃんに無理矢理着せられていたんだよ。フリル系が好きだったから」
悠太は立ち上がって反論したが、大輔はそのまま続ける。
「しかもメチャメチャ似合っていて、その辺の女どもより可愛かったぜ。
まるでおとぎ話から抜け出した美少女そのものって感じだったな」
大輔はその頃のことを思い出したのか、頬を染めつつうっとりとした表情になった。
そんな彼を見ながら悠太は、うんざりした顔になる。
「大輔ソレ、絶対に思い出を美化しすぎだって。あの時は俺たちまだ、5歳くらいだったろうが」
「でも今だったら、絶対に律くらいは可愛かったはずだろ?
何といっても兄妹だしな。
それに俺の記憶ではあの当時、周りの男はみんなお前のことを可愛いって、言っていたんだぜ」
「うわ〜止めてくれ〜! 気色悪い!」
悠太は悶えるように頭を再び抱え込んだ。
「で、誘拐されそうになったのがその頃、だったんだよな」
「誘拐?」
突然降って湧いたように出現した穏やかとはいえない単語で、綾子は思わず眉を顰める。
違うクラスで名前もよく知らなかった頃は、本当に女かと思ってたもんな」
「! あれは、母ちゃんに無理矢理着せられていたんだよ。フリル系が好きだったから」
悠太は立ち上がって反論したが、大輔はそのまま続ける。
「しかもメチャメチャ似合っていて、その辺の女どもより可愛かったぜ。
まるでおとぎ話から抜け出した美少女そのものって感じだったな」
大輔はその頃のことを思い出したのか、頬を染めつつうっとりとした表情になった。
そんな彼を見ながら悠太は、うんざりした顔になる。
「大輔ソレ、絶対に思い出を美化しすぎだって。あの時は俺たちまだ、5歳くらいだったろうが」
「でも今だったら、絶対に律くらいは可愛かったはずだろ?
何といっても兄妹だしな。
それに俺の記憶ではあの当時、周りの男はみんなお前のことを可愛いって、言っていたんだぜ」
「うわ〜止めてくれ〜! 気色悪い!」
悠太は悶えるように頭を再び抱え込んだ。
「で、誘拐されそうになったのがその頃、だったんだよな」
「誘拐?」
突然降って湧いたように出現した穏やかとはいえない単語で、綾子は思わず眉を顰める。