坂井家の事情
悠太がギャラリー中にいる男子生徒を目敏く見つけた途端、そこへ向かって勢いよく人差し指を突き差していた。
フクちゃんと呼ばれた彼は突然名指しされたために吃驚してしまい、思わず持っていたカメラを落としそうになっている。
「何って……だって僕、写真部だし」
フクちゃん――本名は福田憲泰(ふくだのりやす)というのだが――は、頬を掻きながらノンビリとした声を出す。
憲泰は手に持っている愛用のデジカメが更に小さく見えるほどに、大柄な体格をしていた。人によっては「くまのプーさん」を連想するかも知れない。
「じゃなくて!
何でこんなところを撮るのかって、訊いているの!」
憲泰に向かって悠太が、掴みかからんばかりな勢いで迫っていった。
しかし縦横ともに大きなその身体では、小柄な悠太が少し体当たりした程度ではビクともしない。
「川上君に、折角だから撮ってほしいって頼まれたんだよ。
学級委員長の頼みじゃ……断れないだろ」
困ったように答える憲泰。
悠太は言葉の最後に開いた、一瞬の間を見逃さなかった。今度は即座に圭吾に食って掛かる。
「圭吾テメー、フクちゃんに何か渡しただろ」
「は?」
フクちゃんと呼ばれた彼は突然名指しされたために吃驚してしまい、思わず持っていたカメラを落としそうになっている。
「何って……だって僕、写真部だし」
フクちゃん――本名は福田憲泰(ふくだのりやす)というのだが――は、頬を掻きながらノンビリとした声を出す。
憲泰は手に持っている愛用のデジカメが更に小さく見えるほどに、大柄な体格をしていた。人によっては「くまのプーさん」を連想するかも知れない。
「じゃなくて!
何でこんなところを撮るのかって、訊いているの!」
憲泰に向かって悠太が、掴みかからんばかりな勢いで迫っていった。
しかし縦横ともに大きなその身体では、小柄な悠太が少し体当たりした程度ではビクともしない。
「川上君に、折角だから撮ってほしいって頼まれたんだよ。
学級委員長の頼みじゃ……断れないだろ」
困ったように答える憲泰。
悠太は言葉の最後に開いた、一瞬の間を見逃さなかった。今度は即座に圭吾に食って掛かる。
「圭吾テメー、フクちゃんに何か渡しただろ」
「は?」