坂井家の事情
周囲では、歓声が沸き上がっていた。

大輔が弾かれるように振り向けば、悠太を押さえつけようとしていたさやかが、上手く躱される場面だった。

「あっぶねぇ。悠太の奴ギリギリじゃねぇか」

一瞬ヒヤッとする。

大輔も口では色々言ってはいるのだが、悠太のほうをつい応援してしまっていた。

「でもこれ以上騒いだら、流石に先生も来るかもな」

圭吾がポツリと呟いた。

「じゃあどうする? やっぱ中断?」

皆盛り上がっているのだ。そこへ水を差したくはないなと、大輔は何となく思う。

「まあ一応、もしもの時のための準備はしておいたから、多分大丈夫だとは思うが」

「準備って?」

「他のクラスの奴らを教室に入れさせないとか、外に見張りをたてるとか」

「あ! それじゃさっき、山崎たちを外へ呼び出したのって…」

「見張りを頼んでいたのさ」

小学校からの付き合いで分かってはいたことだったが、相変わらず圭吾は抜け目がない。

「けど僕はこの時間で、決着が着くと思っているのさ。多分引き分けにもならないと思う」
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