坂井家の事情
この公立桜ヶ丘中学校は、近辺地域にある東西南北、4つの小学校から集められた生徒たちで構成されている。

悠太と圭吾、大輔、そしてさやかは同じ北小学校出身で、中学へ入学した現在も同じクラスとなり、彼らの腐れ縁は続いていた。

「しかしスゲーよな、今までさやかに一勝もできないなんてさ」

そんな大輔の言葉で、かなりムッとした表情を見せる悠太。

「体格の差だよ。あいつ女のくせにデケーし、力も男以上にあるし。つか、あんなのはもう女……いや、人間じゃねぇよ。
畜生、その内あいつよりデカくなって、絶対勝つ!」

今までどうやってもさやかには勝つことができなかった。悠太はその理由を、自分の体型のせいだと思っている。

「ちょっと、坂井君」

黒板へ向かって息巻いていると、その背中に声が掛けられた。

「もう掃除の時間は、とっくに終わっているんだけど」

クラス女子の棘を含んだ言葉で我に返ると、慌てて教室に掛けられている時計を見た。

「うわやっべ、もう5時過ぎてるじゃねぇか!」

言うが早いか机の上に置かれていたバッグを乱暴に掴むと、一目散に教室を飛び出していった。

「相変わらず、落ち着きのない奴だな」

教室から出ていく悠太を見送りながら、圭吾はポツリと呟いた。
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