拘束お姫様 *番外編開始
*
人気のない長い廊下を、彼は一人歩き続ける。
「何故だ、クロード」
その声に、彼は足を止める。
少し先に居るのは、紅い瞳をした 黒猫。
「初めて人を愛する事が出来たのに、なのに何故……彼女を手放そうとする」
その紅い瞳は、少し怒りを含んでいるかのようだ。
「僕だって……手放したくはないさ。けれどそうしなければ、父上が彼女を―――」
クロードの声は、震えていた。
「……シンデレラを守るのは、お前の役目だろう。彼女の心が傷付いてしまうのが怖くて、お前は逃げているだけだ」
愛を知らない彼は、誰かを愛する方法なんて、分からない。
それ故に、愛するのが、恐い。