プリンな彼女
真紀ちゃんが、稲葉を慰めるように言った。
───だから、どうして落ち込むのよ。
大体、稲葉だってあたしなんかとそんな噂立てられて嫌なんじゃないの?

「だって、あたしなんかが彼女なんて稲葉だって言われたくないでしょ」
「そんなことないですよ。ねっ?稲葉さん」
「あぁ」

───はぁ?
稲葉、そこは普通否定するでしょ?なんで、「あぁ」なのよ。
何を考えているのか、さっぱりわからない。

「どうですか?これを機に付き合っちゃうって言うのは」
「ちょっと真紀ちゃん、もしかして酔ってる?」

───そうよ、酔ってるのよね。
真紀ちゃんったら、ほんと冗談きついって。

「酔ってませんよ。私、こう見えてもお酒は強いんです。でも、祐里香さんも素直になった方がいいです。でないと稲葉さん、誰かに持っていかれちゃいますからね」
「素直も何もねぇ、別に稲葉が誰に持っていかれても関係ないし」
「そういうところ、祐里香さんらしいですけど、稲葉さんの身にもなってください」

真紀ちゃんの毒舌は、尚も続く。
確かに今まで何回か飲み会で真紀ちゃんとは一緒になったけど、お酒は結構飲める方だと言っていたのを思い出した。
それにしたって、どうしてこんな話になっちゃったかな…。
大体、何で稲葉は何も言わないのよ。
ちらっと稲葉を見たが言い返すわけでもなく、ただ神妙な面持ちで遠くを見つめているだけ。

「もう、こんな話よそう。せっかく、美味しいもの食べてるんだし」

あたしがそこで話を打ち切ると、真紀ちゃんもそれ以上は言わなかった。
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