プリンな彼女


「稲葉、ちょっといい?」
「あぁ、どうした」

周りに人がいると言い出しにくいことだったから、稲葉が一人でいるところを狙って声を掛ける。

「あのね。今度の金曜日なんだけど、合コンすることになって」
「合コン?新井が?」

稲葉には、祐里香が合コンするようには見えなかったのだろう。
───そりゃ、あたしが合コンって似合わないかもしれないけど…だからって、そんなに驚かなくてもいいじゃない。

「何よ、悪い?あたしが、合コンしちゃ」
「ごめんごめん。新井の口から合コンなんて言葉が出てくるとは、思わなかったからさ」
「どうせ、似合わないわよ」

膨れっ面の祐里香に苦笑する稲葉。
そんなところも可愛いと思うのは、惚れた弱みだろうか…。

「で、その合コンがどうしたって?」
「えっ、うん。稲葉も誘って欲しいって言われたの。だから、どうかなって思って」
「俺?」
「別に無理にとは言わないわよ」
「いや、もちろん新井も出席なんだよな」
「そうだけど」
「だったら、いいよ」
「へ?」

あっさりOKされて、少々拍子抜けしてしまう。
───だったらって、なんだかその言い方、あたしが出るから自分も出るみたいに聞こえるんだけど。
それもあったが、稲葉がOKしてくれたことも意外だった。
あまりそういうのは、好まないと思っていたのに。

「誘いに来ておいて、あんまり嬉しそうじゃないな」
「そういうわけじゃないんだけど、稲葉は合コンとか好きじゃなさそうに見えたから」
「好きじゃないけど、時と場合にもよるな」

はっきり言って稲葉には合コンなんてものは性に合わないが、誘いに来た相手にもよる。
どんな形でも祐里香と一緒にいられる時間が持てるのなら、逃す手はないのだから。
もしかしたら、この合コンで祐里香がどこぞの輩に取られてしまうかもしれない。
それだけは、絶対に阻止しなければ。
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