プリンな彼女
「取り敢えず、乾杯ってことで」

テ─ブルの上に生ジョッキが並べられ、カチンという音が店内に響く。
───ビ─ルも初めの一口は、美味しいのよね。

「新井さん、いい飲みっぷりだね」

隣の彼は、あたしも顔と名前くらいは知っている人。
理子と同じ部で、たまに遊びに行くと見かける彼女の同期だと聞いていた。

「初めだけなんです。私、あんまりお酒が強くないので」
「ほんとに?新井さんって、飲めそうだよね」
「よく言われます」

彼の言うように祐里香は飲める人に思われているが、そうでもない。
勧められると断れないということもあって、無理してしまうことも多いけれど。

「もし酔っちゃったら、俺が責任持って家まで連れて帰ってあげるからね」
「何だよ、お前ばっかり」

反対側に座っていた彼が、口を挟む。
───そこまで酔うことはないと思うけど…。

ふと気になって稲葉の方を見ると、理子がしきりに話し掛けている。
彼女だけでなく、他の女子も稲葉に集中しているのがわかる。
───やっぱり、稲葉って人気あるんだ。
何だろう…すごく嫌な気持ちになってくるのは…。
今まで、こんなふうに思ったことなんてなかったのに…。

「新井さん、どうしたの?ほら、飲んで飲んで」
「は…い」

彼は祐里香の気を引こうと一生懸命話し掛けてきたが、ほとんど耳に入らなかった。
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